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銀の馬車道 鉱石の道

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「学問成就の道」について話す松岡豊さん=福崎町西田原
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「学問成就の道」について話す松岡豊さん=福崎町西田原

 兵庫県福崎町のほぼ真ん中にある辻川山公園(同町西田原)で、池に浮き沈みするかっぱ人形を眺め、思いを巡らせた。民俗学者の柳田国男や妖怪で知られる町だけど、それだけだろうか? 町のPRフレーズは歴史と文化の薫るまち。そう言えば「辻川は外せない」と地元の人から聞いた。昔、銀の馬車道沿いで栄えた界わいだ。「薫り」を求め、歩いた。(井上太郎)

 かっぱやてんぐ人形を横目に公園の坂を上がり、鈴ノ森神社に抜ける。柳田(国男)少年が登った、登ってない、と諸説あるヤマモモの木や合格祈願の絵馬が境内に並ぶ。「昔は安産の神様で知られたんやけど」と近くで酒屋を営む松岡豊さん(78)が懐かしんだ。

▼柳田5兄弟

 医師の松岡鼎(かなえ)、国文学者の井上通泰(みちやす)、海軍大佐の松岡静雄、画家の松岡映丘(えいきゅう)。多才な4人は柳田の兄弟だ。同神社から東の北野天満神社まで約450メートルの範囲は2016年、「学問成就の道」と名付けられ、柳田を含む5兄弟の像で結ぶ。

 歩き始めてまず出合うのは口ひげがダンディーな胸像。「これは鼎さんね」と松岡さん。しばらく行くと展望台へ。「岸上大作(1939~60年)が育った井ノ口地区が見えます」。岸上は福崎高校のOBで天才歌人。安保闘争に加わる学生の高揚とためらいを詠み、注目されたという。

▼翻訳家・長谷川氏

 北野天満神社に着くと、拝殿の玉垣に、翻訳家の長谷川善雄(1898~1955年)の名があった。神崎郡田原村北野(現福崎町北野)生まれの詩人だ。

 長谷川はフランスの作家ポール・クローデルの全集を翻訳。ポールは日本の戦況が悪化した43年、パリで講演し、日本の分割統治に反対した。長谷川に詳しい北野まつり保存会元会長の埴岡悌二さん(74)は「地主の息子で、地元では『旦那さん』と敬われた。留学で親の財産を多く使ったが、ポールの日本人観に与えた影響は大きい」。

 辻川山は、獅子が寝た形に見えることから「三獅子山」の一つに数えられる。地元の「柳田国男・松岡家記念館」は「歩く、見る、聞くという、民俗学の基本を体感して」と渋くアピールする。「今も子どもの絶好の遊び場」と埴岡さん。ここからまた大物が輩出されるかもしれない。

2019/6/1
 

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