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銀の馬車道 鉱石の道

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銀の馬車道劇団員・鈴木健太さん
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銀の馬車道劇団員・鈴木健太さん

 明治・大正期に飾磨港(兵庫県姫路市)と生野鉱山(朝来市)を結んだ産業道路「銀の馬車道」。その物語をPRする劇団の歩みとともに、大人になったと言っても過言ではない。

 「劇団への参加を両親に勧められた時は迷った。吃音(きつおん)がひどくて。言葉に詰まったらどうしようと、不安でたまらなかった」

 初公演は、大けがで息絶える寸前の父親役だった。セリフがたどたどしくても違和感はなく、何とか本番を終えた。翌年、主役の庄屋の息子役に選ばれ、緊張で稽古中に声が出なくなった。

 「当時通っていた小学校の校長先生も参加していた。自分らしく演じたらいい、と励まされた。不安が和らぎ、乗り切れた」

 団員は約30人。公募で集まった馬車道沿線の住民たちだった。同級生もいれば、普段は接することがない高齢の女性もいた。同じ台本を手に舞台に臨む。

 「仲間とつながる温かさに支えられ、自然に人前で話せるようになった。人々が一つになっていく馬車道の物語と同じ」

 演じるのは馬車道建設に携わる人間模様を描いた人情喜劇。建設を巡って対立していた人々が、やがて打ち解け、日本の近代化を支えた道を完成させる。

 「自宅のすぐそばを通るけど、かつてはどんな道なのか知らなかった。でも、演劇を通して、先人が考えに考え抜いて造った道なんだと肌で感じた」

 馬車道は今春、日本遺産認定を目指す。劇団も結成10年を迎え、新たな公演を予定する。

 「劇団が僕を育て、沿線の大きなエネルギーを育んだ。10年分のパワーをどーんとぶつける年にしたい」

 大学生になった自らの成長を重ねながら、言葉に力を込めた。(記事・宮本万里子、写真・山崎 竜)

■メモ 鈴木健太(すずき・けんた) 1996年生まれ。小学5年の時、NPO法人・姫路コンベンションサポートが企画、松竹が演技指導する銀の馬車道劇団に入団し、ほぼ毎年、公演に参加。日本遺産認定に向けて、馬車道の盛り上げ役を担う。現在は大阪教育大に進学し、地元で教壇に立つことを目指している。福崎町在住。

2017/1/4
 

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