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フランス人鉱山技師コワニェ(朝来市提供)
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フランス人鉱山技師コワニェ(朝来市提供)

 明治政府の「お雇い外国人第1号」で、生野鉱山(兵庫県朝来市生野町)近代化の礎を築いたフランス人鉱山技師、Coignet(1837~1902年)が来日して今年で150年となる。地元生野町では「コワニエ」の読み方で親しまれるが、彼の名前のカタカナ表記は明治以来、「コニエ」「コハニー」「コワニー」「コァニェ」などまちまち。しかし最近、関係者の間では「コワニェ」で統一する動きが広がりつつある。(長谷部崇)

 観光施設・史跡生野銀山(同町小町)に、彼の業績をたたえる胸像がある。銘板は「フランソワ・コワニエ像」。しかし、隣にある解説パネルの表記は「コアニエ」。近くの鉱山資料館のランプの展示には「コァニェ夫妻が使用していた」とあり、収納用の木箱には「コワニーのフランスランプ」。同じ人物なのに、あちこちに別の表記がある。

 文献もバラバラだ。彼の著書を訳した「日本鉱物資源に関する覚書」は「コワニェ」とするが、「生野史鉱業編」は「コワニー」、「生野銀山町物語」は「コァニェ」を採用している。

 「そもそも明治時代の役人が、聞き慣れないフランス語を片仮名でどう表現するかで苦労したようだ」と話すのは、朝来市生野支所地域振興課の中島雄二課長(52)。

 明治初期の公文書などを採録・編集した「太政類典」を見ると、1868(明治元)年の雇い入れの頃は「コニエ」だが、数年後の雇用契約では「コハニー」に変遷している。中島課長も「どないやねん」と苦笑いを浮かべ、「当時の表記が一致しておらず、後世の研究者の表記も割れたのではないか」と分析する。

 生野町では「コワニエ」の呼び方が一般的だが、姫路日仏協会会長で立命館大学講師の白井智子さんが「コワニェ」の方がフランス語の発音に近いと指摘し、見直されつつある。

 白井さんによると、「Coignet」のgneの発音は「ニュ」だが、eは後ろに子音字が来ると「エ」と発音するため、ニュとエを合わせて「ニェ」。「oi」は「ワ」と発音するが「ア」と聞こえることもあり、「コアニェ」「コァニェ」も間違いではないという。

 史跡生野銀山は今年から「コワニェ」で統一する方針といい、朝来市も7月9日に開く来日150年記念フォーラムの表記を「コワニェ」とした。中島課長も現在、「コワニェ、コワニェ…」と正しい発音の練習を繰り返している。

2017/7/21
 

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