エッセー・評論

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撮影・木皿泉

撮影・木皿泉

 箱を見るとつい買ってしまう。古いものでも、新しいものでも、私は吸い寄せられるように近づき、気がつけば手に取っている。

 先日、薬を詰めてあったらしい小さな丸い缶を見つけて欲しくなったのだが、これがどうしても開かないのである。おそらく50年ぐらいは開かずに、そのままいろんな所をさすらってきたのだろう。店のお姉さんが、ピンを使って必死に開けようとしてくれるのだがびくともしない。誰かと約束でもしたかのように、ボクは絶対口を割りませんからというふうに強情なのである。好きでも使えないものは買わないと決めていたのに、意地になった私はつい購入してしまった。家に帰って、火であぶったり叩いたりしてみたがやっぱり開かない。そんなことをしているうちに、なんだかいじめているように思えてきて、開けるのを諦めた。

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2021/3/14
 

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