
撮影・木皿泉
人に必要なのは、わかりやすさだとOLを始めてすぐに知った。まわりから理解されないと、少しずつ排除され、やがて仕事は回ってこなくなり、そうなるといたたまれなくなって、自ら退職せねばならなくなる。地引き網のように、みんなで打ち合わせをしたわけではないのに息を合わせ、はみ出し者を追い込んでゆく。そんなのを目の当たりにして、私はとりあえず気のいいお姉ちゃんを演じることにした。今でいうキャラをつくったわけである。
テニスとスキーの部活に入り、いつも顔は真っ黒で、社内では顔の黒い背の高い子で通っていた。この頃からシナリオの勉強を始めるが、そのことは誰にも言わなかった。ボーナスが入ると古書店で織田作之助の全集を買ったことも黙っていた。当時の女の子がそんなものに8万円も使うと変人だと思われるからだ。
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