
撮影・木皿泉
京都に誠光社という小さな本屋さんがあって、そこが本を作ったからと送ってくれた。「恥ずかしい料理」というタイトルで、いろんな人たちがふだん食べている料理を紹介したものなのだが、ちょっと人に言うのはなぁというものばかりだ。読んでいると、気持ちがなごむ。私自身の何でもなかった普通の日々がどんどんよみがえってくるからだろう。
子供の頃はエアコンなんてなかったから、今頃の時期はストーブに張り付いていた。そこで餅やら酒粕をあぶり、焦げ目がついてちょっと膨らんできたのを、砂糖をつけつけ食べた。冷たい板間と柱時計の音も思い出す。時計の振り子の音を聞きながら、自分はなんて無駄な時を過ごしているのだろうと思って餅を頬張っていたわけだが、今思い返すと何だか幸せな時間だったなぁと思う。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。