
撮影・木皿泉
私は、家族から運動がまるでできないと思われていた。その理由は分からないが、おそらく動き方が鈍かったのだろう。不思議なもので、家族がそう思ってしまうと、私もそうなんだと思い込み、積極的に動くことをしなかった。本を読んだり、ぼーっとしたりして子供時代を過ごした。
中学生になると、体力テストがあった。走ったり、跳んだり、懸垂をしたりするのだが、なぜか私はそのほとんどが最高点だった。ただ投げるのだけが絶望的に下手で、そもそも私には友人がおらず、休み時間にドッジボールやバレーボールに入れてもらったことがなかったのでボールの投げ方が全く分からなかったのだ。しかし、それでも銀賞のバッジをもらった。私には、どうしてもそのことがふに落ちなかった。私は運動オンチのはずで、銀賞などもらえる人間ではないと、頑固に思い込んでいたのだ。
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