エッセー・評論

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撮影・木皿泉

撮影・木皿泉

 父が69歳のとき、自分はガンで、この先長く生きられないと思っていたのか、60代で死ぬのは恥ずかしい、とぼやいた。何が恥ずかしいのかというと、平均寿命まで生きられないのが恥ずかしいのだそうだ。大正生まれの父は、死ぬときも人並みでないと、かっこわるいと思っていたらしい。そんな心配をしていたが、その後8年間生きたので、父にしてみれば、まぁ恥ずかしくない寿命だったのではないだろうか。

 父は、若いころ、自殺しようと思ったそうである。私が小学3年生ぐらいのときのことだ。当時、株に凝っていて、日本も成長期に入ったばかりで、かなり儲(もう)けたようだ。会社は辞めなかったが、働くのをバカらしく思っていて、人のお金を運用するようになり、あっという間に、8千万円の借金を背負ったというから恐ろしい。昭和40年代の8千万である。普通のサラリーマンが扱う額ではない。

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2014/8/4
 

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