
撮影・木皿泉
NHKのBSプレミアムで放送中の「刑事フォイル」というドラマにはまっている。第2次世界大戦中のイギリスが舞台の推理ドラマなのだが、主人公の初老のフォイル刑事が、なんかかっこいいのである。
ナチスから国民を守るという大義と、市井の人々のささやかな暮らしを守るという自分の職務が、時に矛盾して、主人公の前に立ちはだかる。そのたびに、フォイル刑事は、ぐっと耐えたような顔で、多くは語らず、全てを飲み込む。彼はため息さえつかない。大量の煙草(たばこ)や酒で紛らわすこともない。気晴らしは、古い友人との渓流釣りで、もちろん互いに愚痴ったりなんかせず、ユーモアある会話で和むぐらいである。今は、こんなダンディズム、笑われるだけなのだろうか。
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