
撮影・木皿泉
歩いていたら前方に若者が集まっていた。そのうちの一人が棒のようなものを振り回していて、それが私の胸に当たった。こんな時、どうしたらよいのか、とっさに思い浮かばない。感情が出てこないのだ。
こういう時は怒らねばと、取りあえずにらんでみるのだが、相手もまたどうしてよいかわからず、ぽかんとした顔でこちらを見ていた。私は言うべき言葉を見つけられず、そのまま行こうとしたが、何となくよくない気がして戻った。そして、きょとんとしている青年に「ちゃんと謝りなさい」と言った。青年は、ようやく「すみませんでした」と頭を下げた。私は「はい、それでよろしい」と言って立ち去った。
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