
撮影・木皿泉
一流ホテルがフレッシュジュースと称してパック入りジュースを提供していたそうである。その他、芝エビや九条ネギやらの表示が違っていたと、連日、報道されている。
私が最初に知ったジュースは粉であった。オレンジジュースと書かれた徳用袋の口はぎゅっと輪ゴムでしばられ、台所の隅に置いてあった。それを学校から帰ってくるなり水道水でとかして飲んだ。なまぬるかったが、甘くておいしかった。それでも飽き足らず、その粉を妹と競うように指を突っ込んでなめたりした。当然、果汁など一切入っていない。砂糖ですら当時高価なものだったので、代用品のチクロと呼ばれる人工甘味料で味つけされていた。砂糖は、仰々しい百貨店のマーク入りの缶でお歳暮やお中元でもらうものだったからだ。
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