
撮影・木皿泉
家に赤くて丸いプラスチックの空き箱がある。蓋はきらびやかなダイヤモンドカットになっていて、中にセーラームーンのチョコが入っていた。私は、そこに手土産でいただいたクッキーやチョコにかけられていたリボンをくるくる巻いて、しまっていた。
ある時、お客さんが、あやまってその箱を落としてしまった。中から色とりどりのリボンが、いくつも舞いながら落ちてゆくのを見て、そこにいた女性たちがいっせいに、「まぁ」とため息のような声を上げた。リボンを取っておくという行為そのものも乙女っぽかったからか、大人の女の人が、遠くに置き忘れたものを思い出したような声だった。
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