教育

みんなで授業参観

(1)西宮市立今津小 井上日登美先生 6年・国語  ナビゲーションで授業のねらいを共有
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学習計画「ナビゲーション」を活用してスピード感のある授業を展開する井上日登美先生=いずれも西宮市今津二葉町、今津小学校(撮影・笠原次郎)
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学習計画「ナビゲーション」を活用してスピード感のある授業を展開する井上日登美先生=いずれも西宮市今津二葉町、今津小学校(撮影・笠原次郎)
ナビゲーション(左)とスーパー教科書。学習の流れは子どもたちに加え、保護者とも共有している
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ナビゲーション(左)とスーパー教科書。学習の流れは子どもたちに加え、保護者とも共有している

 今月から月1回、兵庫県内の学校などでのユニークな授業を紹介します。子どもたちや同僚の先生の推薦に基づいて〝授業参観〟します。初回は西宮市立今津小学校の6年生担任、井上日登美先生(57)の国語。「ナビゲーション」という学習の手引きを活用し、個別学習とクラス全体での学習を効果的に組み合わせます。(小尾絵生)

 「大きさ約160平方キロメートル」「無数の火口がある」「大陸から3800キロ」…。

 この日の題材はチリのイースター島。子どもたちは事前に教科書を読み、書き込んできたワークシートを見ながら、島の特徴を次々に発表していく。

 ある女の子が「モアイ像が…」と言いかけると、井上先生は突然さえぎり、「今言おうとしたことで3択クイズを作ってごらん」。

 女の子は少し考えた後、「イースター島にモアイ像は何体あるでしょう。①200 ②500 ③800」と即興で出題した。答えは③。教科書に載っていない内容だ。「そんなに?」「すごっ」。驚く声があちこちで上がった。

 実は休み時間、先生は女の子がモアイ像について友だちと話しているのを聞いていた。「子どもが調べてきたことをみんなの前でほめれば、それが価値のあることだとみんながわかる」

     ◇

 井上先生は単元ごとに「ナビゲーション」と呼ぶ学習の手引きを作り、その紙を教室に張り出す。授業の「見通し」を子どもたちにも共有してもらい、自分で学ぶ力を鍛えるねらいだ。

 今回の単元は「説明文」。自分の意見文を書くことが目標だ。これまでの3コマの授業では、言葉の意味を調べたり、ワークシートに沿って文章の構成を考えたりする「ひとり学び」がメーンだった。4コマ目のこの日は、調べたり考えたりしたことを持ち寄り、クラスで意見を突き合わせる「みんな学び」に臨んだ。

     ◇

 イースター島についての発表が終わった後、井上先生は「島の森林が失われた原因はなんだろう?」と問いかけた。すぐにたくさんの手が挙がった。

 子どもたちの手元には、教科書の本文だけをコピーし、1枚につなぎ合わせた〝スーパー教科書〟がある。文章の構成が一目でわかるすぐれものだ。これまでの授業で、段落に番号をつけ、色ペンで序論、本論、結論のまとまりを区切っている。

 別の女の子が指名された。「21段落目を見てください」と呼びかけ、「人間による森林破壊とラットの生態系への影響が原因だと思います」と答えた。

 すかさず「その根拠は?」と返す先生。「『このようにして』という接続詞があるからです」。流れるようなやりとりが続き、先生は答えを書いた札を黒板に張った。

 井上先生は「ナビゲーションは地図と同じ」と話す。目的地を共通に理解しておけば、大きく道に迷うことはない。「見通しを持って学習する姿勢は、日常生活にも生きるはずです」

<先生のこだわり>

□家族も一緒に

 ナビゲーションは保護者にも配布する。「おうちの方へ」という欄を設け、家族の意見を聞く宿題を出すことも。家庭での会話のきっかけづくりも目指す。

□次回予告

 授業の終わりに、次回の内容を予告する。子どもたちはそれに合わせ自主学習でき、授業前の休み時間に軽く話し合いもできる。

主体的に考え、学び合う

 推薦者=兵庫教育大大学院・勝見健史教授 生涯にわたって生きる学力をつける優れた実践を積み重ねています。問題の局面を見通して立ち向かう力、自分なりの考え方を表現していく力を、「ナビゲーション」で徹底的に鍛えています。子どもたちも井上先生の手引きを参考に主体的に考え、学び合っています。

2015/5/3
 

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