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閉校の学び舎 3D画像に 臨場感再現、手軽に閲覧  兵庫県立西宮甲山高の生徒ら 「卒業してからも思い出せる」
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 3次元(3D)スキャンの技術を使って、文化財などをデジタルデータとして記録する取り組みが広がっている。実物に触れなくても細部まで観察できるほか、臨場感のある再現が可能で、閉校になる校舎や歴史的な建築物を保存する動きも出てきた。スマートフォンなどで手軽に閲覧でき、若い世代の関心を引くツールとしても期待される。(潮海陽香)

 9月、兵庫県立西宮甲山高校(西宮市鷲林寺)では、3Dカメラを持った生徒たちが校舎内を撮影して回っていた。学び舎(や)の風景を立体画像で記録する「3Dデジタルアーカイブ」の試みだ。

 同校は県立高校の再編で統合されるため、2027年の卒業生を最後に閉校になる。在校生や卒業生の思い出にしようと、3Dデータで残す活動が進む。校舎や体育館、中庭など校内の952カ所を撮影。画像を組み合わせることができるサイトで合成し、立体化して見えるようにした。

 アーカイブには、在校生の学校生活の様子や授業風景などの動画も組み込み、インターネット上で公開する予定という。実際にその場にいるかのような臨場感があり、撮影をした生徒会長で2年の佐武志依奈さん(17)は「卒業してからも、いつでもネット上で学校を思い出せるからうれしい」と喜んだ。

▼西宮神社なども記録に残す動き

 校舎の記録を提案したのは、同市で3Dカメラの販売などを手がけるアンカー神戸会員の「三日月プランニング」。同社はコロナウイルス禍をきっかけに、業務として3Dスキャンの技術を使い始めた。

 同社で役員を務める三苫裕和さん(50)によると、3Dスキャンはコロナ下の不動産業界で導入が広がったという。誰とも接触せずに物件の様子を紹介する方法として、自宅にいながら部屋の内部を360度見ることができる「バーチャル内見」に活用された。

 3Dの間取りを体験することで、生活の動線や広さの感覚をつかみやすくなった。物件に足を運ぶ必要がなく、時間短縮やコスト削減にもつながり、欠かせないツールになった。

 三苫さんはこうした業務を通して、記録として残したい建物などにも活用できると考えたという。西宮甲山高に続き、えべっさんの総本社・西宮神社(同市社家町)を3Dデータで残すプロジェクトにも取り組んでいる。

 「まだまだ認知度は低いが、立体感を出し、実際にその場にいるかのような没入感を与えてくれる」と三苫さん。多様な分野で今後、応用が見込まれるといい、「地震が発生した際にどう逃げるかのシミュレーションなどの活用も検討している。提案をしていきたい」と意気込む。

▼県も地域遺産をデータ化 若い人が興味を持つきっかけに

 3次元(3D)スキャンの技術を活用した3Dデジタルアーカイブは、スマートフォンが普及し、手軽に閲覧できるようになったことも広がりの背景にある。

 兵庫県は昨年、地域の遺産を記録に保存しようと、太山寺(神戸市西区伊川谷町)や県公館(同市中央区下山手通4)の3Dデータ化を始めた。県立大の学生に協力を求め、モバイル端末を使って撮影。仮想空間上で再現し、誰でも閲覧できるようにしている。

 取り組みは、若い世代になじみのあるデジタルツールを通じて、地域の文化に触れてもらう狙いもある。撮影に参加した学生からは「今まで関心のなかった地域の文化に親しむことができた」と好評だったという。

 県の担当者は「デジタルツールで、地域の情報に触れることへの敷居が低くなり、若い人が興味を持つきっかけになったらうれしい」と話した。

2025/11/5
 

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