連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

大学発ベンチャー 右肩上がり 兵庫県立大 今春、初の「学生起業家」認定 <ローカル+α> 24年度5000社超 5年前の倍に 卒業後も後押し 関西中心に地方台頭
  • 印刷
兵庫県立大初の学生起業家に認定された船越丈寬さん
拡大

兵庫県立大初の学生起業家に認定された船越丈寬さん

兵庫県立大初の学生起業家に認定された船越丈寬さん

兵庫県立大初の学生起業家に認定された船越丈寬さん

 大学生や研究者が起業、創業に挑む動きが近年、活発だ。兵庫県立大学は今春、学生起業家の第1号を認定し、卒業後も事業を後押しする。神戸大では研究室発の新会社が、事業化に向け本格始動した。大学という「知」の現場から飛び出し、社会課題の解決や新たなビジネスの開拓に果敢に取り組む一方、経営ノウハウやマンパワー不足などの課題もうかがえる。(久保田麻依子)

 兵庫県立大では3月、卒業を間近に控えた社会情報科学部の船越丈寛さん(23)が立ち上げた企業「ペアマインド」が、学生ベンチャーとして初認定された。

 事業の主力は、人工知能(AI)を活用したインテリア、内装の設計や、インテリア絵画の制作販売だ。船越さんは高校時代からプログラミングが得意で、大学3年ごろに起業を意識。学内外の専門家らに事業計画などについて助言をもらい、学内審査を経て認定を受けた。

 設置場所の写真をAIが分析し、そこに適したインテリア絵画を制作するサービスは、神戸市や鉄道会社の協力も得て、神戸市内の駅で実証事業を実施。海外企業が取引に前向きな姿勢を見せるなど好評という。

 現在、米国の大学院で学ぶ船越さんは「失敗も含めて何もかもが挑戦。利益化に向けて一つずつ成果を上げたい」と意気込む。

     □

 国の統計によると、大学の研究の事業化(スタートアップ)や学生起業に関連する「大学発ベンチャー」の2024年度までの累計設立数は5074社。近年は特に右肩上がりで、19年度(2566社)から約2倍に増加した。新規創業数も前年度から大幅に増えている。

 背景にあるのは、国の政策による後押しや学生向けのアントレプレナー(起業家)教育の普及。特に関西を中心に地方の台頭が目立つ。

 船越さんの起業を後押しした県立大も数年前から、若手起業家の育成を目指す研修に本腰を入れる。理系学部でも経営戦略やビジネス関連の講義が人気だという。

 担当者は「(学生起業の認定で)知財の取り扱いなど専門性の高い部分でのサポートを続けていきたい」と話す。

     □

 生ごみが医薬品に-。神戸大大学院の津田明彦准教授(52)=有機化学=が昨年4月に創業した企業「光オンデマンドケミカル」では、下水処理場や農場で排出される温室効果ガスや家畜ふん尿を活用し、医農薬品の原薬を製造する。

 現在は民間企業へのライセンス料などで利益を上げる。国や大学と連携して今冬には生産プラントを神戸市内に開所し、本格的な製品化を目指す。

 神戸、大阪、尼崎市など共にプロジェクトを進める自治体も増え、津田准教授は「研究が社会から注目されていることを日々実感する」と手応えを口にする。

 一方で、革新的な技術により新たな商機への可能性を見いだしつつ「研究と事業は別。人材が少ない中、ビジネスのノウハウやしきたりを勉強することばかり」と表情を引き締める。

 出資話が持ち上がる際、事業の進め方や安全管理の面で折り合わないケースも少なくない。「ビジネスの知識や経験が浅いからこそ『焦ってはだめだ』と言い聞かせている」と津田准教授。「信頼できる方々に協力を仰ぎながら、実用化に向けてこつこつと進めていきたい」と話した。

2025/11/5
 

天気(10月27日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 20℃
  • ---℃
  • 50%

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 23℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ