連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

川重 介護現場の負担軽減へ 機器やロボット導入支援の事業参入 施設とメーカーを橋渡し
  • 印刷
拡大

 人手不足に悩む介護事業者の課題を解決するため、川崎重工業(神戸市中央区)が、現場の負担軽減や省力化に役立つ介護機器やロボットなどの導入を支援する事業を進めている。自社製品に限らず、さまざまなメーカーと介護施設を「橋渡し」するサービスで、神戸市内の施設で実証実験を実施。情報通信技術(ICT)で介護スタッフの動きなどを計測して効果を示し、施設側にサービス活用を呼びかける考えだ。(石川 翠)

 今月4日、神戸・三宮のビジネス交流拠点アンカー神戸で、「介護の未来」をテーマにした川重主催のセミナーが開かれた。同社ヘルスケア事業推進部の寺井昭平さんと、一般社団法人日本ノーリフト協会(同市兵庫区)の保田淳子代表、介護付き有料老人ホーム「ディアージュ神戸」(同市垂水区)の中尾美隆(よしたか)副支配人の3人が登壇した。

 3者は介護現場で機器やロボットを活用する実証実験に取り組んでおり、その成果などを紹介した。

 実証実験は、ディアージュ神戸が日本ノーリフト協会とともに、介護スタッフの負担軽減を目指してさまざまな機器を試していたことから、川重が加わって実施することになった。屋内空間の人の位置を把握できる川重の技術を使い、どの作業にどのぐらいの時間がかかっているのかを計測。スタッフらの動きをデータにして「見える化」し、機器を導入する前後の変化を調べた。

▼自社に限らず

 その結果、人力でやるよりも時間がかかるイメージを抱いていた「立ち上がり補助具」は、実際はあまり時間が変わらず、業務の負担を軽減する傾向が確認できた。ディアージュ神戸の中尾さんは「機器の導入後もフォローがあるので、一歩を踏み出せた」と振り返った。

 実証実験の成果を踏まえ、川重は昨年8月、介護施設とメーカーの橋渡しを支援する事業に参入すると表明。橋本康彦社長の直轄事業としてスタートさせた。

 具体的には、①介護スタッフらの動きを計測②データを基に、業務を改善・効率化できそうな部分を抽出③効果が見込める介護機器やシステムを選定④導入後の利用状況や効果を計測・分析⑤メーカーに機器の改善を提案-という流れを構築した。新サービスでは自社のロボットにこだわらず、現場に見合った機器やシステムを提示するという。

▼データを蓄積

 この事業モデルを日本医療研究開発機構(AMED)に提案したところ、今年7月、「介護DXを利用した抜本的現場改善事業」に採択された。今後、日本ノーリフト協会や各地の介護施設、介護機器メーカー、レンタル事業者からなるコンソーシアムを結成し、2026年3月まで事業モデルの有効性を検証する。その後、30年度までに全国数百施設への展開を目指す。

 川重ヘルスケア事業推進部の市川和宏部長は「在宅を含め介護には多くの人が関わっており、現場で蓄積したデータは機器の改善や開発などに幅広く活用できる」と話している。

▼講演きっかけ、社長直轄事業に

 大手重工メーカーの川崎重工業(神戸市中央区)が介護分野に参入したのは、橋本康彦社長が社長に就任する前、日本ノーリフト協会(同市兵庫区)の保田淳子代表の講演を聞いたことがきっかけだったという。

 保田さんは「介護スタッフ自身が利用者を抱え上げたり移動させたりする日本の介護現場の常識を変えたい」と活動を続けてきた。オーストラリアなどでは主流になっている専用の福祉用具を用いる手法を取り入れることで、負担を軽減することを提唱している。

 一方、橋本社長はロボット事業に長く携わり、産業ロボット以外にも、手術支援ロボットや病院向け配送ロボット開発など医療分野で事業を広げてきた。保田さんの講演を聴き、介護分野への展開を構想。介護施設と機器メーカーをつなぐ役割に活路を見いだし、社長直轄事業に位置付けた。

 橋本社長と保田さんは10月3日午後、神戸・ポートアイランドの神戸国際会議場で始まる「ノーリフトケア国際シンポジウム」(日本ノーリフト協会主催、4日まで)で特別講演をする予定。シンポ参加費は1万2千円(同協会会員は8千円)。同協会TEL078・862・8503

2025/9/26
 

天気(9月27日)

  • 30℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 31℃
  • ---℃
  • 10%

  • 30℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ