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神戸市のマッチング事業で応募企業とオンライン面談する神戸電鉄の社員=神戸市兵庫区新開地1
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神戸市のマッチング事業で応募企業とオンライン面談する神戸電鉄の社員=神戸市兵庫区新開地1

神戸市のマッチング事業で応募企業とオンライン面談する神戸電鉄の社員=神戸市兵庫区新開地1

神戸市のマッチング事業で応募企業とオンライン面談する神戸電鉄の社員=神戸市兵庫区新開地1

 企業同士が連携して新たな事業を生み出す「オープンイノベーション」。技術や知見、人材などの資源を互いに持ち寄り、新規事業を実現させる取り組みが兵庫県内でも広がっている。神戸市も2022年度から企業のマッチング事業「オープンイノベーション・マッチングプログラム」をスタート。市内の大手10社が参加し、ビジネスの「芽」が生まれつつある。最前線を取材した。(大島光貴)

▼神鉄×IT企業

 神戸市北区などで鉄道事業を行う神戸電鉄。沿線は人口減少が著しく、にぎわいづくりが課題だった。

 「自前主義が強く、自社でできないことはやらない雰囲気が社内にあった」。経営企画部の赤瀬明歩さん(25)が振り返る。

 転機は20年。神戸市と沿線の活性化で協定を結んだのを機に、協業にかじを切った。これまでに300社近くと面談。登山・アウトドア用品店の好日山荘(同市中央区)とアウトドアで活性化を試みるなど複数の取り組みが進む。

 今回のマッチング事業にも参加し、地域資源を生かした沿線の活性化を提案。カーシェアを手がける東京のIT企業との協業を決めた。机や電源、Wi-Fi環境を備えた自動車を貸し出し、同市北区の農村地域を巡って、豊かな自然の中で仕事ができる「ワーケーション」の展開を目指す。

▼行政が後押し

 市のマッチング事業には、神戸電鉄に加え、川崎重工業や神戸製鋼所、エム・シーシー食品(MCC)、ネスレ日本、フジッコ、アシックスなど神戸を代表する企業10社が名を連ねる。

 各社が協業のテーマを示すと、全国から計218件の応募があった。書類選考とオンライン面談会を経て、4社が事業化に向けて協業相手を決定=図。他の企業も新規事業創出へ協業候補先と準備を進めている。

 MCCは、コーヒーかすを堆肥化して農作物を育てることを提案した愛媛県の企業と連携。バジルソースに使うバジルの栽培に役立てる考えで、MCCの水垣佳彦常務(49)は「今の事業に自然な形で『循環』がつくれる。ワクワクしている」と期待する。

 アシックスは、農作業をトレーニングと捉える「アグリスポーツ」を提唱。農業体験の事業などを手がける神戸と長野県の企業2社と、対象となる農作業の洗い出しや、心身への効果のデータ集めを行う。

▼出合いの場も

 オープンイノベーションでは、企業の出合いの場も重要だ。昨春、神戸・三宮にできたビジネス交流拠点「アンカー神戸」では、川重が定期的に新興企業との交流イベントを開き、ロボット分野で自律走行制御技術を持つシークセンス(東京)との協業につなげた。

 すでに病院内で血液検査の検体を運ぶ実証実験に成功。川重の近未来モビリティ総括部の江口雄三担当部長(39)は「病院内で安全に走行するにはシークセンスのシステムが必要不可欠。さらに協業の議論を深めたい」と話し、他社と組む重要性を強調した。

▼成功例は「ヒートテック」

開発スピードアップに利点

 オープンイノベーションは、米国の経営学者ヘンリー・チェスブロウが2003年に提唱。日本では10年以降、さまざまな製品の寿命が短命化したことなどを背景に注目が高まった。

 新規事業の創出などで、互いの技術やアイデアを組み合わせる手法。人材や技術、情報を共有し、開発スピードを上げ、事業の選択肢を広げられる利点がある。

 カジュアル衣料品店を展開するユニクロと繊維大手の東レが提携して、保温効果の高い肌着「ヒートテック」シリーズを生み出したことが有名だ。

 オープンイノベーションを支援する「eiicon company」(エイコンカンパニー=東京)によると、新型コロナウイルス禍で既存事業への危機感が高まり、事業戦略として積極的に取り入れる動きが広がっているという。

 エイコンのシニアコンサルタント、松尾真由子さん(33)は「既存事業への危機感が強い会社ほど、本気で取り組んでいる」と分析。「目的やゴールを自分たちの言葉で話せるかどうかが成功のポイント。お互い何を得たいのか(協業先と)認識を合わせることが大切だ」と話す。

(大島光貴)

2022/12/10
 

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