エッセー・評論

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イラストレーターWAKKUNこと涌嶋克己さん
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 先日、神戸の友人から連絡があった。

 「祖父が亡くなり、その四十九日に祖母と食事をするのだけれど、さみしいので一緒にご飯を食べてくれない?」と、おさそいの電話。何も予定がなかったので、二つ返事でOKした。

 友人とおばあちゃんとボクで食事に行くとき、もう1人、若い男の子も参加してくれて、にぎやかになった。

 人あたりのやわらかい少年は14歳だった。そして、彼の話を聞いておどろいた。

 彼は、もう1人の14歳の少年と共に、自転車で四国をめぐっていたと話してくれた。

 彼らは亡きおじいちゃんのマージャンや話し相手だったそうで、90歳のおばあちゃんのかわりに、2人で自転車に乗り、四国でお遍路の旅をしているのだった。

 2人とも、おじいちゃんの形見の古いフリースを着て旅をしている、とのことだった。

 「何とステキな少年なんだ!」

 血のつながりもない少年たちが…。話を聞いて、ボクはうれしくなった。

 おかげで、おばあちゃんは神戸で手を合わせ、安心して過ごせたという。

 食事に行くときは、ボクがおばあちゃんの車イスを押していたのだが、帰りは少年が替わってくれた。

 その時、彼は押しながら、おばあちゃんに、

 「はーい、ちょっと道がガタガタするヨー」

 とか、

 「はーい、ちょっと段差があるからねー」

 とか、やさしく声をかけるのだった。

 それを聞いているボクの方まで、何だか、とても幸せな気分になっていったのだ。

(涌嶋克己、イラストも)

【わくしま・かつみ】1950年神戸市長田区生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。86年から個展やグループ展を開催。WAKKUN(わっくん)の愛称で知られる。同区在住。

2021/12/8
 

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