ボクは喫茶店が若い頃から好きで、よく通っていた。ある日、永田收(おさむ)さんという友人の写真家から、ボクが愛していた喫茶店についていろいろ教えてほしいと依頼があった。
同じ頃、神戸・元町の沖食器の沖常雄さんからも下町の喫茶店の話を聞きたいと申し出があったので、3人で会って喫茶店の話をすることにした。
場所は元町のトンカ書店(現・花森書林)という名の古本屋で集合となった。
3人で話しているうちに「コットン」という名の一日中タンゴが流れている店とか、「ゴム倶楽部(くらぶ)」や「船舶倶楽部喫茶室」等々、伝説の古きよき喫茶店が次々あがった。けれど、それぞれ閉まってしまった名店の思い出話となっていった…。
「なくなってしまってから話すのもええけど、ちゃんと店があるうちに、店主と出会って紹介できるように、皆がそれぞれ探偵団になって、そんな人や店を見つけては報告したりしたいなァ…」と話していた。
すると、トンカちゃん(森本恵さん)が「私も、その探偵団に加わりたい!」と言い、その横で客として来ていた太田朋さん(イラストレーター・絵本作家)も「私も加わりたい!」と言い、そんならみんなで「喫茶探偵団」をつくろう!!と、みんなの心がノリノリになり「KOBE喫茶探偵団」の誕生となった。
2010年のことだった。
後に現代美術家の池内美絵さんも加わった。
神戸の魅力ある喫茶店を探して、味わい、冊子も作り、その発表会も、阪急春日野道駅近くの神戸天昇堂(神戸市中央区)とか、元町映画館の2階を会場に、取材した喫茶店の写真やイラストや文章で発表した。「モトマチ喫茶」や「喫茶ポエム」等、今ある店のステキなコーヒーも味わえるイベントを重ねていったのだった。(ちなみに参加費は500円!)
10年以上続いているこの「KOBE喫茶探偵団」には、たった二つ、誓いの言葉があります。
「ひとつ、我々は喫茶店を愛しつづけます」
「ひとつ、我々はKOBE喫茶探偵団として歴史を重ねても、決して権威とならないことを誓います」(涌嶋克己、イラストも)
【わくしま・かつみ】1950年神戸市長田区生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。86年から個展やグループ展を開催。WAKKUN(わっくん)の愛称で知られる。同区在住。
2021/2/10(16)ネギをハサミで切ってみると2021/7/14
(15)何と不思議なうれしい縁2021/6/9
(14)次の一歩、踏み出す勇気を2021/5/12
(13)いつもニコニコ、愛されて2021/4/14
(12)ウールでもない、絹でもない2021/3/10
(11)探して、味わって、発表して2021/2/10
(10)味わったのは、あたたかな空気2021/1/13
(9)心と、人と、つながっている2020/12/9