先日、神戸・元町通にある喫茶店で、次の展覧会のテーマを考えている時だった。
店内にビートルズの曲が流れてきた。
「わぁ、なつかしい…やっぱりビートルズの曲は、ええなぁ…」。なんだか心が安らいで栄養をもらった気がした。
50年以上昔、「ジョン、いい曲ができたんだ!」。うれしそうなジョージ・ハリスンの声に、ポールやリンゴも集まって来て、
「うん、いいな、この曲、やろう!」
メンバーみんなの心に灯がともり、音合わせ…。細かいところを修正しながら、気持ちをこめて歌ったり演奏したりしてゆき、ステキな曲ができあがる。
ライブでお客さんの前で演奏した後、やがてスタジオでのレコーディング。
心がひとつになった4人は演奏しながら、満面の笑みをうかべ笑い合う♪
しかし、その時、その演奏した音が曲が、50年以上の時を越え、何千キロ離れた小さな日本という国の神戸の街の喫茶店で、一人の絵描きの心に、安らぎと心の栄養をはこぶことになる具体的なイメージを、4人は持っていないだろう。
だからこそ、ひとつひとつ、愛情をこめて大切に生きてゆくことが、自分だけじゃなく、時を越えたり、場所を越えたりしながら人間どうし、幸福を共有してゆくことになるのだな、と強く思ったのだった。
(涌嶋克己、イラストも)
【わくしま・かつみ】1950年神戸市長田区生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。86年から個展やグループ展を開催。WAKKUN(わっくん)の愛称で知られる。同区在住。
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