エッセー・評論

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イラストレーターWAKKUNこと涌嶋克己さん
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 3、4年前のこと。

 1年の間に、親しい友人や仕事関係の仲間らが次々と、何と11人も亡くなった。

 次から次への悲しい知らせに、友人たちの元気な顔や、互いの大切な時間が思い出され、悲しく重い気分の毎日が続いた。

 そんなある日の夜、久しぶりに神戸・元町の堀江座という、カレーやチャイがおいしい店に入った時だった。

 少し重い空気をまとったボクに気づいてか、せいさんというマスターは…

 「WAKKUN、新しい紅茶を仕入れたから、いっしょに飲んでくれへん?」と、あたたかい笑顔とともに声をかけてくれた。

 「あっ、ありがとう!」と礼を言うと、せいさんは気をきかせて、紅茶を運んでくれたと同時に、ボクの大好きな曲をかけてくれた。

 それは「Good Night」という題の名曲で、遠くバハマの旅に出掛けている親が、日本で留守をしている子どもに、

 「眠っている君に薄荷(はっか)色したバハマの風を送るよ、そして、もうすぐ家に帰るからね♪」といったことをやさしく語る詞だった。

 「プカプカ」という名曲を作った西岡恭蔵さん作曲、作詞は、その奥さんのKUROちゃん、歌っているのは高田渡さんだ。

 その気持ちいい曲に身をゆだね、心が軽く軽くなっていった時だった。

 「ハッ! この3人は、今はいないボクの友人のミュージシャンたちだ!」

 それに気づいた。

 気づいてから、ゆっくりボクの胸が熱くなっていった。

 亡くなってしまった大切な友人のミュージシャンたちは、今、生きているボクに大切なことをとどけてくれている!

 時を越え、場所を越え、ボクの心をなぐさめながら、ゆっくり次の一歩をふみ出す勇気を与えてくれているんだ!

 それに気づいたボクの胸は心は熱くなり、感謝の気持ちでいっぱいになっていったのだった。(涌嶋克己、イラストも)

     ◇     ◇

 涌嶋さんの個展「もらった種とまいた種」が15~26日、神戸市中央区山本通2のギャラリー島田で開催予定です。

【わくしま・かつみ】1950年神戸市長田区生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。86年から個展やグループ展を開催。WAKKUN(わっくん)の愛称で知られる。同区在住。

2021/5/12
 

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