エッセー・評論

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イラストレーターWAKKUNこと涌嶋克己さん
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 ボクには東野健一という同じ絵描きの親友がいた。

 彼は3年前に亡くなったのだが、生前よく絵のことや互いの生き方など、話し合っていた。

 ボクは大学を中退して絵の道を歩いている途中で彼と出会った。彼は長年勤めていた会社を辞めて絵の道へ進んだ。互いにどこの画壇にも属さず歩いている時、出会ったのだ。

 自分の表現方法をさがしていた彼は、インドに渡り、インド式の絵巻物(ポトゥ)に出合った。インドから帰ってきた彼は内田百●(ひゃっけん)の「狼(おおかみ)の魂」の話に感動し、絵巻物の「狼の魂」をつくり、日本はもちろん、インドやアメリカ等々、世界中をめぐり、東野健一式ポトゥを語り、広げていった。

 ボクはといえば新潟水俣(みなまた)病の絵本をつくったり、鳥取の祖母が字を書けなかったことで絵本をつくったりし、彼に見せ、よろこんでもらえた。

 共にいろんなことを経験し、それを糧にして表現していった。

 2人は「絵本をつくる人展」や「三人展」等々、共に展覧会をしたけれど、決して群れず、ずうーっと一緒ということは意識的にしなかった。

 それは、互いにたくさんの人から種をもらい、いろんな所で種をまいてゆく表現者として役目があるので、別々に歩いてゆこうと約束していた。

 けど、時々会って話して時間を共にすると、それぞれ自分の足場が確認できるので、うれしかった。

 そんな時間がボクにこんな詩を書かせた。

 「舟出」

 サテ、舟出ダヨ

 オスキナ処(ところ)ヘ ススンデ オユキ

 色(いろ)ンナコトト 出アイナサイ

 ソシテ タクサン 話シテオクレ

 約束ダヨ

 ソシテ ボクモ 舟出ダヨ

 マ・タ・ネ

(涌嶋克己、イラストも)

【わくしま・かつみ】 1950年神戸市長田区生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。86年から個展やグループ展を開催。WAKKUN(わっくん)の愛称で知られる。同区在住。

※●は「聞」の「耳」が「月」

2020/8/12
 

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