エッセー・評論

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イラストレーターWAKKUNこと涌嶋克己さん
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 以前、神戸市中央区の国際協力機構(JICA)関西から依頼され、アフリカから日本に短期留学をされている医療関係者の方々に絵を描くワークショップをした時のこと。

 その中で50代のかっぷくのいい男性医師が、とても印象的な絵を描かれたので尋ねてみました。

 「この絵は一体どんなことを思って描かれたのですか?」

 「わっくんがボクたちに、自分の心の中で大切だなと思うことや、いとおしいと感じることを胸にいだいて素直に絵で表現してみましょう!と言われたので、ボクは考えてみました」

 「ボクは子どもの頃、家族が病気で亡くなったり、友人が病気で亡くなったり、悲しい思いをしているのに、それを見ても何もできないことでくやしい思いをしてきました。だから多くの人の命を救える医師になろうと決心して、勉強してガンバッテなりました」

 そして彼は自分の絵を指さしながら絵の説明をしてくれました。(イラストを参照)

 「上の列はそれぞれの人間で、下に続く線はその人の内臓や心につながっています。さらにその下に続く線の下にはそれぞれ大勢の家族や友人がつながっています」

 さらに医師は話を続けて「今、ボクの病院には、患者さんが病気を治してほしいので頼ってきてくださっています。けれどエイズなどであまりにも多くの患者さんが毎日訪れるので、はじめは『○○さん』とか『○×さん』と一人一人、お名前で呼んで接していたのに、今では符号のように『105番!』とか『21番!』とか呼んでいることに気付きました」。

 「だから、この絵は、ボクが国に帰ったら、今度は病院で一人一人の患者さんのことを、元のように『○○さん』『○×さん』と、その方のお名前をお呼びして接していくと決意した大切な絵なのです」

 真っすぐボクを見て答えられました。

 ボクは彼からズシリとした熱い思いを受けとったのでした。

(涌嶋克己、イラストも)

 【わくしま・かつみ】1950年神戸市長田区生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。86年から個展やグループ展を開催。WAKKUN(わっくん)の愛称で知られる。同区在住。

2020/12/9
 

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