エッセー・評論

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イラストレーターWAKKUNこと涌嶋克己さん
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 ここ数年、ミュージカルのポスターやチラシの絵を描いているので、年に1度、東京に行っている。

 公演中の一日、舞台が終わると、ステージで、デモンストレーションでライブペインティングをさせてもらっている。

 昨年のこと、その日参加した出演者の方やスタッフの人たちと食事をして打ち上げの後、深夜、ホテルに入った。

 秋とはいえ、暑い夜だったので喉が渇き、部屋で冷たいカフェラテ等、飲みたくなり、近くの大きなコンビニに歩いて行った。

 広いコンビニは深夜ということもあり、アジア系の若い店員2人とボクだけだった。

 カフェラテはセルフサービスだったので新しいその機械の前で勝手が分からず、まごまごしていると、気づいた店員の1人が笑顔で近づいてきて、親切にラテのセットを手伝ってくれた。

 親切な彼の態度がうれしくて、「ありがとう!」と礼を言うと、彼は温かい笑顔のままで、彼の手の平を上にむけ、ボクにゆっくりと聞いてきた。

 「どちらの国の方ですか?」

 聞かれたボクは、少しとまどいながら「日本の国の方なのですが、年齢がいってて、勝手が分からず…」と少し笑いながら答えると、彼はほほ笑みながら、ゆっくりうなずいた。

 バンダナを巻いた短パン姿の客のボクと、同僚が、笑い合ってる空気の中に、もう1人の若いアジア系の店員もニコニコしながら、加わってきた。

 今度はボクが2人に対して、ゆっくりと手の平を上にして、「どちらの国の方ですか?」ときいてみた。

 若い2人は、同時に少し胸をはり、「ネパールです!」と、笑顔をみせながら返してくれた。

 秋の深夜、東京タワーが見える都会の中で、ボクはとっても温かい時間を味わったのだった。

(涌嶋克己、イラストも)

【わくしま・かつみ】1950年神戸市長田区生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。86年から個展やグループ展を開催。WAKKUN(わっくん)の愛称で知られる。同区在住。

2020/9/9
 

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