節目となる誕生日に、家族からプレーヤーをもらった。アナログレコード人気が再燃という記事を見て「欲しい」とつぶやいたのを覚えてくれていた。
昔のLPを引っ張り出して聴いていたが、それに飽き足らず中古レコード店巡りを始めた。神戸の元町周辺を少し歩くだけでも6、7店は回れる。
ほとんどが雑居ビルの狭い階段の上。恐る恐るドアを開け、棚に並ぶ一枚一枚をめくるのが宝探しのようで面白い。数万円の高価盤がある一方で名盤が500円ほどだったりする。
帰宅して盤面にそっと針を落とし、12インチ(30センチ)サイズのジャケットを手にして聴く。音質を評価するほどの耳はないが、CDのとがった音とは違い、柔らかくて疲れない気がする。
記事の通り若い客も少なくないという。ある店主に「プレーヤーを持っていない高校生も買っていきますよ」と聞いた。ジャケットを見て欲しくなるのだろうか。数年前、20代のめいに古いフィルムカメラを譲って大喜びされたのを思い出す。
いまやスマホの操作一つで、世界中のあらゆる音楽が簡単に聴ける。それに対し、好きなレコードを探し出してプレーヤーで聴くのは、なんと手間のかかることか。だからこそ楽しく、趣味になり得る。
フィルム用の映写機がある映画館を残そうと支援したり、古書店を立ち上げたりする若い世代の動きは各地で見られる。アナログ的なものへの関心の広がりは、物好きな人たちの懐古趣味とは言えないように思う。
共通するのは、デジタルにはない手触りなど五感に響くところだろう。なぜわざわざ時代に逆行し、非効率なものを求めるのか、人工知能(AI)には理解できないかもしれないが。
