「その後」が気になっていた元衆院議員、菅野(かんの)志桜里さんの近況をオンライン集会で聞く機会があった。「山尾さん」の方が通りがいいかもしれない。数年前、SNS上で広がった「保育園落ちた」や「検察庁法改正案に抗議します」の声を国会で取り上げ、政権を追及した。
検事だった2009年、民主党の衆院選候補者公募に応じ、初当選。21年衆院選に立候補せず、3期10年の議員生活にピリオドを打った。その後は弁護士として活動している。
辞職後のインタビューで「政治家は期間限定の方がいい。選挙を気にせず、本当にやりたいことに打ち込める」と語り「別の立場で新しくスタートしたいことがある」とも話した。その機会は案外早く訪れたようだ。
昨年、旧統一教会問題を巡る消費者庁の対策検討会委員として報告書をまとめ、被害者救済新法につなげた。先日の集会では、検討会は公開され「市民社会と議論を共有できた」と語る一方、「立法府にいて問題を取り上げられなかった責任を感じる」「これで終わりにはしない」と自戒を込めた。
今春から慶応大大学院で国際刑事法を学んでいる。ロシアによるウクライナ侵攻で、人間が人間らしく生きるために世界が曲がりなりにも守ろうとしてきた最低限のルールが崩れる瀬戸際にあると危機感を抱いた。人道国家として日本が役割を果たすため「国際法に精通する必要がある」と考えたそうだ。
政治の現実を内側で垣間見た人が、今は外から理想との溝を埋めようとしている。政治家一筋のプロばかりでなく、経験を積み市民社会と行き来する「期間限定政治家」が増えれば、政治はもっと理想に近づける。菅野さんの実践に注目している。
