テレビの「新婚さんいらっしゃい!」に先ごろ、同性の男性カップルが登場した。半世紀にわたり5千組以上を紹介してきた番組で初めてだという。
フランスでの公開収録に男性同士の事実婚カップルが参加したことはあったそうだが、日本での収録に例はなかった。
40代の日本人バレエダンサーとリトアニア出身の30代のインテリアデザイナー。2人は同性婚が認められるフランスで結婚した。彼らを、番組は他のカップルと同じように迎えた。
番組出演を決意するまでの2人の思いは、朝日放送テレビのホームページなどで紹介されている。お互いを信頼し、多くの人に祝福される幸せそうな姿を見ると、新しい風は日本でも吹き始めたと感じる。
ところが、そうした風の流れを阻害しかねない法律が、番組の放送後に国会で成立した。
LGBTなど性的少数者への「国民の理解が必ずしも十分でない」としつつ、取り組みについては「全ての国民が安心して生活することができるよう留意する」との文言をわざわざ入れている。「LGBT理解増進法」なのに、まるで権利拡大を求める声にくぎを刺すかのよう。
元の案にあった「差別は許されない」も「不当な差別はあってはならない」に変えられた。例えば障害者差別解消法と比べると、少数者排除の改善に向けた行政や事業者などの努力義務も曖昧だ。法の成立に意味がないとは思わないが、何のための立法なのかと首をかしげる。
そもそも2人がフランスで結婚したのは、日本に同性婚を認める法制度がないからだ。現状を「違憲」「違憲状態」とする司法判断も相次ぐ。日本の政治の「理解したふり」は、いつまでも通用しないだろう。
