先週末、娘が通う小学校の運動会があった。かけっこやダンスに頑張る姿に涙腺が緩み、将来への期待を膨らませる。
はた目には単なる「親ばか」にしか見えないだろう。だが、親にとって自分の子どもを尊敬できることほど幸せなことはない。たとえ途中でくじけても、わが子を信じ続けられるのが親と言うものかもしれない。
むろん、度が過ぎればはた迷惑である。親は甘くなり、子も甘えて自立できない。政治の世界にも「反面教師」はいる。
岸田文雄首相が、長男で政務秘書官の翔太郎氏を1日付で更迭した。
翔太郎氏を巡っては、昨年末に首相公邸内で忘年会を開いていたと週刊文春に報じられた。公的空間である赤じゅうたんが敷かれた階段で複数の親族と並んで撮影した写真は、組閣の記念写真と同じ構図だ。じゅうたんに親族が寝そべる写真など公私混同に批判が集まった。
当初首相は厳重注意にとどめていたが、世論が収まることはなく、結局更迭となった。翔太郎氏は過去にも自覚を欠いた行動が報じられている。支持率が回復してきた首相は息子に足を引っ張られて頭が痛かろうが、猛省すべきは秘書官に就けた首相自身の公私混同である。
首相自身も衆院議員3世。いずれ後継者にと考え、箔(はく)を付けようとしたのか。永田町では「異次元の親ばか」との声も出ているというが、笑えない。
首相自身が苦労を知らないから、庶民の心情が理解できないのではないか。過度な「親ばか」は、区別して「ばか親」と呼ぶそうだ。息子に肩入れする以上の愛情を、この国のすべての子どもたちを大切にする政策に注いでもらいたい。一人の親としての切実な願いである。
