2022年に生まれた赤ちゃんが統計開始以来初めて80万人を割ったことが判明したのが、今年2月。少子化のスピードは国の推計より10年早く、衝撃が広がった。
そして5月。厚生労働省が公表した23年1~3月の出生数は前年同期を5%下回った。このペースが続けば、今年は70万人台前半になるかもしれない。
危機感の表れだろう、ある男性から少子化を憂う手紙をもらった。「女性が高学歴化し結婚しなくなったのが元凶。批判はあろうが女性の大学進学を禁じてはどうか」とあった。
足元の少子化は、そもそも若者が減っているためである。婚姻率の低さも関係している。ただ、それだけではない。日本総合研究所の上席主任研究員、藤波匠さんは「子どもを持つことに対する若者の意欲が低下している」と指摘する。
国の統計などで少子化の要因を分析すると、16年以降は、既婚者の出生率低下の影響が大きくなっているという。つまり、結婚しても子どもを持たない、もしくは子どもの数を抑える人が増えつつある。
「結婚したら子どもを持つべき」と考える未婚者は、男女とも長年過半数を占めていた。ところが、21年には女性で急減し、4割を切った。さらに、非正規で働く女性が結婚や出産をあきらめる傾向が見られる。
若い世代に厳しい経済・雇用環境や、家事と育児における男女不平等が、こうした変化を招いている可能性が否定できない。藤波さんは「若者の多様な選択を支えるのが少子化対策のあるべき姿」と話す。同感だ。
国の経済や社会保障を維持するためという観点のみで少子化対策を語っていないか。「大人世代」は振り返る必要がある。
