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最初に投票箱から票を取り出してまとめていく「開披台」。窓から差し込まれているのが、クーラーの冷気を屋内に送り込むためのダクト=いずれも10日夜、神戸市東灘区甲南町5
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最初に投票箱から票を取り出してまとめていく「開披台」。窓から差し込まれているのが、クーラーの冷気を屋内に送り込むためのダクト=いずれも10日夜、神戸市東灘区甲南町5
各投票所からタクシーに乗せ、開票所の体育館に続々と運び込まれてくる投票箱=10日夜、神戸市東灘区甲南町5
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各投票所からタクシーに乗せ、開票所の体育館に続々と運び込まれてくる投票箱=10日夜、神戸市東灘区甲南町5
選挙区用には2台の自動読み取り機を使用。紙詰まりなどがあるとすぐ直せるよう、メーカーの職員も立ち会っている=10日夜、神戸市東灘区甲南町5
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選挙区用には2台の自動読み取り機を使用。紙詰まりなどがあるとすぐ直せるよう、メーカーの職員も立ち会っている=10日夜、神戸市東灘区甲南町5
選挙区の開票作業を終え、保管のため段ボール箱に詰めていく職員たち。投票結果が不服で調査を求められたときのため、当選者の任期中は残す=11日未明、神戸市東灘区甲南町5
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選挙区の開票作業を終え、保管のため段ボール箱に詰めていく職員たち。投票結果が不服で調査を求められたときのため、当選者の任期中は残す=11日未明、神戸市東灘区甲南町5
右端に並んで座るのが立会人。ここのチェックも終えた票の束が、左の白い机「集積台」に並べられていく=11日未明、神戸市東灘区甲南町5
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右端に並んで座るのが立会人。ここのチェックも終えた票の束が、左の白い机「集積台」に並べられていく=11日未明、神戸市東灘区甲南町5

 自民、公明の与党が大勝し、日本維新の会や国民民主党を含めた「改憲勢力」が議席を伸ばした第26回参院選。7月10日の投開票日の夜、神戸市東灘区では灘中学校・灘高校体育館(甲南町5)で開票作業が行われた。投票所には欠かさず行っているという人でも、あまりなじみのないであろうこの開票所。皆さんの清き1票のその後をリポートする。 

 ■最大の敵

 10日午後8時を回ると、体育館前にタクシーが列を作った。トランクから出てくるのは銀色の投票箱。当日区内42カ所の投票所に期日前投票所分を加えた、選挙区、比例代表の計約90箱が館内に運び込まれる。

 記者席がある2階に上り、長机が並ぶ1階の作業場を見渡す。蒸し暑い中にかすかな冷風を感じ、窓に目をやると、等間隔にダクトが通っていた。外に設置したクーラーから冷気を送り込んでいるという。

 この時期の開票の最大の敵は、暑さ。「円滑に作業を進めるため、以前から使っています」と区選挙管理委員会の担当者。手の汗で投票用紙の字がにじんだり紙がひっついたりしてしまうトラブルに備えるためらしい。票が飛ばない程度の微風だが、熱中症予防にも欠かせない。

 ■重ねてチェック

 職員約180人がそろい、午後9時に開票開始。まずは「開披(かいひ)台」で票を仕分けする。

 ここで候補者や政党ごとに分類することもあるが、今回は自動読み取り機を使うため、手作業では短辺と長辺をそろえるだけ。表裏両面の字を識別できる優れものに、次々と投票用紙の山がセットされていった。

 読み取り機では、候補者や政党ごとに事前に設定された吐き出し口に分けて排出される。一定数たまれば職員が抜き取り、次の工程に渡す。目視と機械で複数回チェックし、100票の束にした状態で、各立候補者が選任した立会人が確認。この日は13人が、開票作業に不備や不正がないか目を光らせていた。

 こうして何重にもチェックされた投票用紙の束が「集積台」と呼ばれる机に並び集計、公表されていく。

 ■「バードウオッチング」

 その間、記者は30分ごとに配られる選管の中間発表を待ちつつ、双眼鏡を手に作業台を凝視していた。

 職員たちが開披台で仕分ける票の内訳や、自動読み取り機からどの候補者の票を何回取り出したのかを、約1時間かけて数える。通称「バードウオッチング」といい、いち早く当選確実を報じる判断材料に役立てる。

 この日は他の報道機関も集団でバードウオッチを試みていた。「カタヤマカタヤマ」「スエマツスエマツ」などとぶつぶつ聞こえてくるのは決して特定の候補を応援しているわけではなく、取材の一環である。

 ■最後の難関

 額の汗をふきふき、待つことおよそ4時間。日付が変わり、11日午前1時8分に選挙区の得票が確定した。午前0時時点で既に98%の票が集積台にそろっていたが、そこからが意外に長い。

 どの候補者や政党に投票したのかがはっきり分からない「疑問票」が残っているからだ。過去には疑問票の扱いをめぐって1票差の当落が後にひっくり返った例もあり、職員たちが最も神経を使う作業の一つとも言える。

 比例では「案分」票の集計もあった。立憲民主党と国民民主党が略称に使う「民主党」の票は、得票数に応じて最後の最後に両者に配分する。当落の大勢が決まっていようがいまいが、こうした処理が難航すれば当然、開票作業は終わらない。

 今回、集計をミスした伊丹市と入力システムの不具合があった西宮市では、確定が11日の朝までずれこんだ。東灘区の開票所ではトラブルはなかったが、それでも作業終了は午前1時50分。選管委員長がマイクを握り「お疲れさまでした」と、残っていた職員をねぎらうと、場内が安堵(あんど)の空気で満ちた。

 記者席も大きく一息。時計の針を眺めていると、区内で選挙区、比例代表ともに約9万6千票という大きな数字も、それが「1票の重み」の集合体であることがよく分かる気がした。

 選挙の開票所は毎回、有権者も参観できる。東灘区での次の選挙は、来春の兵庫県議選、神戸市議選となる予定。

(井上太郎)

→「東灘区のページ」(https://www.kobe-np.co.jp/news/higashinada/)

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