エッセー・評論

  • 印刷
冬日を浴びるツタの葉(撮影・三津山朋彦)

冬日を浴びるツタの葉(撮影・三津山朋彦)

 O・ヘンリーの『最後のひと葉』ほど、多くの人々に粗筋を知られている小説はないだろう、と思われる。窓から見える枯れ葉の、最後の一枚が散ったら自分は死ぬ、と信じている病人が、いつまでたっても落ちない枯れ葉に励まされ、元気になる。実はその葉は、友人が描いた絵だった……。これでたぶん、間違ってはいないはずである。

 ところが先日、仕事で久しぶりに読み返す機会があった。すると、いろいろいい加減な思い込みをしていたことが判明し、驚かされた。まず、段ボールか何かを切り抜いて枯れ葉色に塗り、枝にくくりつけていた、と思っていたのだが、本当は煉瓦(れんが)の壁に描かれた絵だった。そしてそれを描いたのは、同じアパートに住む、売れない老いた画家、ベアマンさんであり、友人の女性ではなかった。さらには、夜中、こっそり雨に打たれながら枯れ葉を描いたベアマンさんは、肺炎で死んでしまうのだ。

この記事は会員限定会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。

2021/1/9
 

天気(9月7日)

  • 34℃
  • 27℃
  • 20%

  • 36℃
  • 24℃
  • 40%

  • 35℃
  • 26℃
  • 20%

  • 35℃
  • 25℃
  • 30%

お知らせ