
行き交う世界(撮影・鈴木雅之)
カポーティの短篇小説「ミリアム」(川本三郎訳)を読んでからは、例えば電車の中や病院の待合室で見知らぬ誰かに話し掛けられても、あまり動揺しなくなった。
知り合いだったかな、と勘違いするほどの上機嫌で次から次へと質問を繰り出される、いきなりタイガースの不甲斐(ふがい)なさについて同意を求められる、延々とお嫁さんの愚痴を聞かされる……。いずれにしても以前なら、どうやって相手を不愉快な気分にさせずに、さり気なく会話を終わらせるか、あるいはその場を立ち去るか、考えすぎて疲れてしまっていた。ミリアムと同じ罠(わな)にはまってもおかしくない場面が、何度もあった。
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