エッセー・評論

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やむにやまれず(撮影・宮路博志)

やむにやまれず(撮影・宮路博志)

 夜、ジョギングをしているとさまざまな人たちを見かける。とある熱帯夜、ワイシャツ一枚で歩くおじいさんがいた。荷物の詰まった手提げ袋を片手に、二本の脚をむき出しにして歩いていた。いくら何でもパンツは履いていたと思うが、ワイシャツの裾が太ももの微妙な位置にあって、はっきり確認はできなかった。ミニのワンピース姿ととらえれば、さほど驚くべき事態でもない、と私は自分を納得させた。おじいさんの脚は白くてほっそりしていた。

 また別のある日、ニワトリを抱っこした小父さんとすれ違った。一瞬、目がきょろりと動いたので、ぬいぐるみでないのは確かだった。両腕に包み込まれたニワトリは安心しきったように丸くなり、小父さんの胸にしな垂れ掛かっていた。その様子から、彼らにとってそれがごく自然な状態であるのが分かった。私は足を止め、遠ざかってゆく鶏冠の赤色を見送った。

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2013/10/5
 

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