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後輩と語り合う神戸常盤女子高校の西岡志保さん(右)。「あすパ・ユース震災語り部隊」で震災について学び伝える活動に取り組む=神戸市中央区東川崎町1
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後輩と語り合う神戸常盤女子高校の西岡志保さん(右)。「あすパ・ユース震災語り部隊」で震災について学び伝える活動に取り組む=神戸市中央区東川崎町1
開発した防災ゲーム「バージ」の画面を見せる若者防災協議会代表の稲澤遥樹さん(左)と、代表補佐の野田宗汰さん=神戸市中央区、神戸学院大学
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開発した防災ゲーム「バージ」の画面を見せる若者防災協議会代表の稲澤遥樹さん(左)と、代表補佐の野田宗汰さん=神戸市中央区、神戸学院大学
阪神・淡路大震災の話を含め、和やかに語り合う高校生、大学生と住民ら。手前は震災直後の写真=神戸市灘区中郷町5、地域共生拠点・あすパーク
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阪神・淡路大震災の話を含め、和やかに語り合う高校生、大学生と住民ら。手前は震災直後の写真=神戸市灘区中郷町5、地域共生拠点・あすパーク
阪神・淡路大震災の体験談に耳を傾ける高校生ら=神戸市灘区中郷町5、地域共生拠点・あすパーク
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阪神・淡路大震災の体験談に耳を傾ける高校生ら=神戸市灘区中郷町5、地域共生拠点・あすパーク
子どもたちに、考案したゲーム「バージ」を使って防災を伝える稲澤遥樹さん=神戸市内(提供)
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子どもたちに、考案したゲーム「バージ」を使って防災を伝える稲澤遥樹さん=神戸市内(提供)

 阪神・淡路大震災は17日で発生から28年がたった。被災地では追悼行事がピーク時の4割まで減り、これまで体験世代が担ってきた継承活動の先細りが心配される中、若者が語り部となって記憶をつなごうとする試みが広がりつつある。4人に1人が震災後生まれになった兵庫県で、次世代による語り継ぎの萌芽をどう育てるか。災後30年以降を見据え、「伝える」取り組みは正念場にある。

■「聞き手」であり「語り手」

 「阪神・淡路大震災のことを若者に教えてください!」。今月、神戸市灘区でチラシ約1200枚が戸別に配られた。昨年5月に発足した「あすパ・ユース震災語り部隊」の活動だ。

 高校生、大学生、教師ら約20人が参加。区内の施設「地域共生拠点・あすパーク」で月1回、地元住民に震災の体験談を聞く。

 「聞き手」であると同時に「語り手」でもある。昨年秋には、震災学習で訪れた県外の学生や高校生に学んだことを伝えた。

 「経験していない自分が伝えていいのか、迷いもある。でも、そんな悩みを含めて伝えていけたら」。神戸常盤女子高校3年の西岡志保さん(18)=神戸市須磨区=は言う。

 参加のきっかけは高校の生徒会役員となり、東日本大震災の被災地を訪ねたこと。「失われたものの大きさを肌で感じた。生まれる前の阪神・淡路を知りたいと思った」。

 今月14日。チラシを見た住民ら15人ほどが集まり、28年前の写真を見せてくれた。西岡さんは当時の話に熱心に耳を傾けた。

■大学生が開発したのは

 神戸の大学生が交流サイト(SNS)で呼びかけ、約2年前に立ち上がったのが「若者防災協議会」。神戸学院大、関西大、香川大などの学生に加え、神奈川県の高校生、社会人ら計25人が所属する。

 災害時に迫られる選択を疑似体験できるカードゲームを開発し、子ども向けの出前講座を始めた。ゲームは、南海トラフ巨大地震が起きてから避難所に向かうまでを想定。防災クイズに答えたり、取るべき行動を選んだりしながら、無事に避難できるかを体感する。

 代表の神戸学院大3年の稲澤遥樹さん(21)=兵庫県高砂市=は子どものころ、過去の災害を特集したテレビ番組を見て興味を持ち、高校2年で防災士の資格を取った。大学でも防災を学ぶ。

「同世代の関心はまだまだ高くない。『防災』への敷居をどう低くするか。気軽に取り組める工夫が要る」

■若年世代なりの危機感

 こうした活動の背景には、歳月の経過とともに記憶のリレーが難しくなっていくという若年世代なりの危機感がある。

 「市民による追悼行事を考える会」の調査では、市民団体などが今年予定した震災の追悼行事は42件と、震災20年だった8年前(110件)から大幅に減少。この3年は新型コロナウイルス感染拡大の影響も大きい。

 兵庫県統計課の推計によると、県内人口のうち震災後生まれの割合は24%(昨年10月時点)。およそ4人に1人に上る。

■芽吹く若者の語り部、後押しを

木村玲欧・兵庫県立大教授(防災教育学)の話 親も子も震災を知らない世帯が今後、増えていく。せっかく芽生えてきた若者の継承活動を後押しするためにも、そうしたグループ同士の交流、ネットワークづくりを行政が手助けするべきだ。活動への助成事業を充実させる必要もある。直接経験していない世代は災害を「わがこと」としてとらえにくい。具体的なエピソードで、当時を想像させる「間接的被災体験」の取り組みが重要。教育現場の役割は大きい。どんな教訓を伝えるべきか整理すべき時期だろう。

【特集ページ】阪神・淡路大震災

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