
いつの間にか(撮影・山崎 竜)
私が小学生だった50年前、蓑虫(みのむし)は秋の風物詩で、街路樹などにぶらさがる蓑を見ては秋の訪れを感じたものだ。初めて蓑を開けて中の幼虫を見たときは、分泌する糸で作った蓑が強靱(きょうじん)で、容易にちぎれないのに驚いた。蓑を取り上げた幼虫に毛糸や色紙を与え、色とりどりの蓑を作らせたこともある。今思うと可哀想(かわいそう)な実験だったが、自然と生き物の驚異に触れる最初の経験だったと思う。
古来親しまれた蓑虫は、枕草子にも登場する。親である鬼に似て恐ろしい心を持つと疑われ、襤褸(ぼろ)を着せられて捨てられ、「父よ、父よ」と泣くのだという(蓑虫は鳴かないが)。
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