
「注目!!」(撮影・大山伸一郎)
昔から、人前で話すのが苦手である。一対一なら、まだ相手の反応を見て話の内容を調整できるのだが、何十人、何百人を目の前にすると、あまりに予測不能なのでめまいがしてくる。他愛(たわい)もない冗談を言ったとしよう。3人くらい笑ってくれるかもしれない。半数は面白くないのでむすっとしたままだ。2割は意味がわからず、1割は私の滑舌が聴き取れず、怪訝(けげん)な顔をしている。残りは最初から聞いていない。これなら、まず上々の部類だろう。
だが、万一、たった1人でも、その言葉が意図せずに過去のトラウマに触れ、殺意を抱かせたとしたら、どうなるか。さらにそれが3人なら将来に大きな禍根を残すし、10人ならいつか殺されるかも。50人なら、もはや生きて降壇はかなわないだろう。スピーチとは、本来それくらいのリスクをともなっているのだ。
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