
「蟷螂の斧」(撮影・三浦拓也)
まずは、奇妙なタイトルについて説明したい。
作家が社会問題について持論を述べることは多いが、世の中を斜に見た局外者の意見は、しょせん負け犬のオーボエ、引かれ者のアリアで、ほとんど影響力はない。ゆえに、大作家でも、「蟷螂(とうろう)の斧」と謙遜するのである。カマを振りかざし天子の牛車に立ち向かうカマキリに喩(たと)えた言葉だが、私ごときでは、カマキリの迫力にすら及ばないため、このタイトルとなった。
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