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告示前に出された福岡県議会の広報紙(右)と神戸市会の広報紙
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告示前に出された福岡県議会の広報紙(右)と神戸市会の広報紙

 4年に1度の統一地方選が終わった。4月9日投開票の県議選や市議選を巡っては、福岡県議会が告示1週間前に、現職の顔写真付き一覧を議会広報紙に載せて各戸に配布しており、市民から事前運動に当たるのでないかと疑問視する声が上がった。全国の状況を見ると、神戸市会も告示の3カ月前、同様に広報紙で現職特集を組んでいた。これってどの程度問題なの?

 福岡県議会事務局によると、「ふくおか県議会だより」は、県議選の告示1週間前の3月24日に新聞折り込みで約100万部配布された。表紙に県内の選挙区割りの地図、現職県議の氏名と会派を掲載。さらに内側の見開き2ページで現職の顔写真や氏名、会派、当選回数を載せ、県議会の「4年間の主な軌跡」も見開きで特集していた。

 広報紙は、各会派の議員計6人で構成する編集会議で内容を決定。前回と前々回に現職特集は組んでいなかったが「議会を身近に感じてもらいたい」として掲載を決めたという。

 公選法は、選挙期間中以外の選挙活動を「事前運動」として禁止している。西日本新聞社には読者から「告示直前におかしくないか」との投稿があった。

 ただ、総務省選挙課などに聞くと「個別の事案についてはコメントは控える」と回答。編集会議の委員長は取材に選挙目的を否定した上で「任期最後の広報紙。掲載内容を検討し、地元議員をもう一度確認してもらいたいとの意見が会議で出た。純粋にそういうこと」と話した。

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 とはいえ、どこまでを選挙目的とみなし、どこから事前運動とされるのか。

 神戸市会では市議選の告示3カ月前の1月、広報紙「神戸市会だより」の2月号に現職の顔写真を一覧で掲載していた。各議員のホームページなどに誘導するQRコードも一緒に載せており、この広報紙は福岡県と同様、自治体ホームページにも上がっている。

 神戸市会事務局によると、2月号は1月末ごろに各戸へ配布され、特集は市民に議員をより身近に感じてもらおうと、毎年この時期に続けているという。

 取材には「新年度の予算案を審議する重要な議会の前に、改めてメンバーを紹介することが目的。選挙は意識していない」とした。

「選挙の公正性に疑念」専門家指摘

 東京大の金井利之教授(自治体行政学)は「選挙では、新人も含め全ての候補者が、有権者に向けて情報提供できる機会が保障される公正さが求められる。選挙直前に、立候補者も含む現職議員が顔写真や名前付きで住民に広報されるのは、選挙の公正性に疑念を生じさせ、議会不信を招きうる」と指摘する。

 日本大の安野修右専任講師(公選法)は「公選法では、自治体はそもそも、事前運動など明らかな違反を除き、規制対象として特段想定されていない」としつつ、こう注意喚起した。

 「公選法の趣旨は、公正かつ公平な選挙。議会が公的な予算を使い、選挙が迫る中で現職の露出を増やす手法は問題だ」

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 この記事は西日本新聞社のコーナー「あなたの特命取材班」の記事に、神戸新聞社が追加取材して再編集しました。

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