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高校生らに向け、兵庫県選挙管理委員会などがインターネット選挙運動の注意点をまとめた画像=神戸市中央区下山手通5
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 インターネットを使った選挙運動が解禁されて今年で10年になる。候補者や有権者にとって交流サイト(SNS)は欠かせないツールとなり、ネット情報に触れる機会は増えた。ただ、投票率アップや若者の政治参加は、当初に期待されたほどに進んでいない。専門家からは制度を巡る課題も指摘される。(上田勇紀、門田晋一)

 ネットを活用した選挙運動は、2013年4月の公職選挙法改正で解禁。同年7月の参院選から、政党、候補者、有権者が公示・告示日から投票日前日までホームページ、動画サイト、SNSを通じ、政策をPRしたり、特定の候補者への投票を呼びかけたりすることが可能になった。

 今月9日に投開票された兵庫県議選、神戸市議選でも、各陣営が演説の様子をアップしたり、活動予定を書き込んだりし、インスタグラムやツイッターを通じて支持を訴えた。「ネットによる選挙運動は定着し、もはや常識」と兵庫県選挙管理委員会。23日投開票の統一地方選後半でも活発に利用されている。

 とはいえ、若者が政治に関心を持つきっかけになっているとは言い難い。神戸市垂水区のアルバイト山村太一さん(22)は「誰が通っても変わらないんじゃないかという思いがある。同年代とも選挙の話題にはならない」と話す。普段からSNSをよく使い、投票には毎回行くが、周囲の関心は高まらないという。

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 投票率は上がるどころか低迷が続く。先の兵庫県議選では4割を切り、39・01%。前回19年よりわずかに上向いたが、過去2番目に低かった。例年、10、20代は他年代に比べて特に低い傾向にある。

 神戸大大学院の品田裕教授(政治過程論)は「ネットによる選挙運動は、もともと政治に関心が高い人には効果があるが、関心がない人には届かない。候補者側の発信は若い世代のつぼにはまっていない」。関西大の岡本哲和教授(政治学)も「投票先を決めるためにネットを利用する若者は少ないとみられ、投票率に結びついているとはいえない」と指摘する。

 両教授がそろって重要視するのが主権者教育だ。関心を高めるためには、子どもの頃から選挙の意義や政治の仕組みを地道に教えていくしかないという。県や市町の選管も高校向けの出前講座に力を入れるが、投票率に関する限り、効果は見通せない。

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 ネット選挙運動では、メールの取り扱いを巡り疑問の声も上がる。有権者が応援する候補者への投票を友人らに呼びかける際、無料通信アプリ「LINE(ライン)」やツイッターなどのSNSは使えるが、メールは禁じられている。

 公選法のガイドラインは、メールは誹謗中傷やなりすましに悪用されやすいことを理由に挙げる。しかし、なりすましはSNSでも問題となっており、見直しがないまま10年がたった。

 品田教授は「ラインはよくてメールはだめというのは説明しづらく、分かりにくい」と話す。

■ネット選挙運動解禁後の「違反」摘発なし

 兵庫県警によると、2013年のインターネット選挙運動解禁後、今年3月末までに県内でネット関連の違反を摘発したケースはない。一方、警告した事案は6件あり、県警は選挙違反の未然抑止に注力している。

 警告内容で最も多かったのが事前運動だ。立候補予定者が公示・告示日より前に、交流サイト(SNS)に投票依頼を投稿したり、具体的な投票先を呼びかけたりしたケースが2件ずつあった。選挙の期間前にSNSに投稿した出陣式の案内も警告対象となった。

 また、18歳未満の場合、街頭演説などの選挙運動をSNSでシェアしたり、リツイートしたりすると公選法違反になる恐れがある。

 県警はホームページにネット選挙運動などの通報専用の「選挙違反情報通報窓口」を開設。メールによる情報提供を呼びかけている。

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