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宮崎秀明監督(左端)を中心にミーティングする灘高校ナイン=神戸市東灘区魚崎北町8
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宮崎秀明監督(左端)を中心にミーティングする灘高校ナイン=神戸市東灘区魚崎北町8
県大会に向けて練習に熱が入る=神戸市東灘区魚崎北町8
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県大会に向けて練習に熱が入る=神戸市東灘区魚崎北町8
練習メニューが書かれたホワイトボード。時間が小刻みに記される=神戸市東灘区魚崎北町8
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練習メニューが書かれたホワイトボード。時間が小刻みに記される=神戸市東灘区魚崎北町8

 16日に開幕した高校野球の春季兵庫県大会(神戸新聞社後援)に、67年ぶりに灘高校(神戸市東灘区)が出場する。難関大学への進学率は全国屈指ながら、春季大会では半世紀以上にわたり地区大会で苦杯をなめてきた。重たい扉をこじ開けられたのはなぜ? 選手たちが鍵として挙げる「夏1勝」の正体とは…。(千葉翔大)

大阪や奈良、半数以上が県外から通学

 「もう一本、お願いします!」。全面人工芝で、主に野球部が使用する約75メートル四方のグラウンドに、部員の声が響く。指揮を執って9年目の宮崎秀明監督(45)が、選手に向けて鋭いノックの打球を放っていた。

 同校は春季県大会の神戸地区大会1回戦で葺合高(同市中央区)に11-0で八回コールドゲーム勝ち。2回戦で星陵高(同市垂水区)に5-3で競り勝ち、ブロック代表となった。

 さっそく県大会に進出した要因を聞いた。宮崎監督は「何か特別なことをしたわけじゃない。長い歴史の扉を一つ開いたのはうれしいが、選手を近くで見ている立場から言えば、驚きはない」と冷静に語った。

 灘高野球部には現在、1~3年生計23人が所属。おおむね週6日、1日2~3時間の練習を積む。あくまで勉強が優先のため、学習塾の試験などを控えた部員は早退することもある。

 また、中学校から入学した選手が大半を占める。多くは受験勉強に専念するため、一時的に小学校低学年から中学年で野球とは距離を置いた。中学もしくは高校入学後にボールを握った選手もいるという。

 通学距離にもたまげた。難関大学に多くの合格者を輩出しており、遠方の子どもたちも入学を目指す。野球部内でも大阪市や奈良県など県外から通う部員が半分以上で、最も遠いと広島県から通う選手がいた。

 戦力や技術がたけているわけではない。独自の練習を編み出したわけでもない。あえて言うならば「例年より部員数が多い」(宮崎監督)ことくらいだろうか。頭を抱える記者に、宮崎監督が教えてくれた。

12年ぶり「夏1勝」が目線を上に

 「うちの伝統は先輩が後輩に教えること。私が就任する以前から、先輩は後輩に新しい発見を与えてくれた。その積み重ねが実を結んだのではないか」

 その代表例が昨年7月の兵庫大会。灘高は初戦、4点差を逆転して10-4で勝った。当時は唯一の3年生部員だった主将が適時打を放つなどし、12年ぶりの初戦突破に導いた。2回戦は昨春の選抜大会にも出場した県内屈指の強豪校、東洋大姫路高(姫路市)に0-15でコールドゲーム負けを喫したが、一つ勝ち上がったことで手ごわい相手と対戦し、チームの目線が上を向いたという。

 現主将で3年の堀坂俊輔選手(17)は「昨年夏の1勝が、今年の春季大会のブロック突破につながった。一つ一つ勝ち上がれば、強い相手と対戦できる。曖昧だった目標がより具体的になった」と証言する。

 今大会の初戦は23日、G7スタジアム神戸(神戸市須磨区)でプレーボール。昨年の秋季大会の神戸地区大会敗者復活戦で敗れた神戸学院大付属高(同市中央区)と対戦する。

 3年で4番打者の田中壮太郎選手(17)は、直前に迫った一戦に「二つ勝って試合が続くのは本当に楽しい。今回は点を取り、試合を有利に進めたい」と力を込めた。

    ◇

常に「問い」と真正面から向き合う

 ちょっとだけ面食らった。67年ぶりに高校野球の春季県大会に出場する灘高野球部。部活動の歴史に並んだことで、少しは浮足立つものかと思っていたが、宮崎秀明監督(45)や選手たちは落ち着いていた。久しぶりの神戸地区大会突破で、気持ちが高ぶっていたのは記者だけだった。

 大会を目前に控え、チームは守備練習に時間を割く。宮崎監督は「ある程度の練習メニューはこちらが提案する。ただ選手が『もっとここを改善したい』と言えば、その意見を尊重する」。自主性を重んじる校風を垣間見た気がする。

 超が付くほどの進学校で、自然と勉学に力を入れる。ゆえに部員の練習時間や技術は、強豪校には及ばない。では、その差を埋めるには-。灘高ナインの練習を見ていると、常にその問いと真正面から向き合っているように思えた。

 きっとその姿勢は、灘高野球部に限ったことではない。強豪ひしめく大会で、一つでも多くの勝利を積み重ねようと努力する、全ての球児に通じるはずだ。

 厳しい鍛錬を積む冬のオフシーズンが終わり、夏の前哨戦である春季県大会が開幕した。各校がどんな戦いを見せるのか、やっぱり胸の高鳴りは抑えられそうにない。(千葉翔大)

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