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住民が高齢化するハイツの現状を語る岩永耕一さん=神戸市須磨区
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住民が高齢化するハイツの現状を語る岩永耕一さん=神戸市須磨区

 31日に告示された兵庫県議選と神戸市議選。新型コロナウイルス禍や物価高が暮らしを直撃し、少子高齢化など課題が山積する中、有権者に聞いた。あなたは1票に何を託しますか?

 JR須磨駅から、坂道を歩くこと10分以上。半世紀前に造られたハイツを背に、「若い世代を団地に呼び込む手助けを」と訴えるのは、岩永耕一さん(74)だ。高台に立つ11棟には、現在約800人が暮らすが、住民の高齢化が目立つ。

 岩永さんは建設会社の社員だった30歳のころ、妻と子ども2人の計4人で入居した。当時は子育て世代がこぞって入居し、周囲は皆、似たような家族構成だった。そして今は、多くの子ども世代が就職などで親元を離れていった。

 2016年から3年間、ハイツをまとめる理事長を務めた岩永さんは、現状を「高齢者がお互いに助け合っている」と説明する。

 岩永さんによると住民の約3分の1が65歳以上。計332戸のうち、約30部屋が空室のままという。

 岩永さんは理事長に就任してすぐ、建築販売会社の社員に「このまちをどう思うか」と聞いたことがある。返事はこうだった。

 「このままだとハイツに住む人は減り、ゴーストタウンになるだろう」

 岩永さんは「あの言葉はショックだった」とつぶやく。19年の夏には1人暮らしの60代男性が部屋で亡くなった。病死で、死後1週間ほどが経過していたようだ。岩永さんは体調を心配し男性宅を訪問していただけに、「助け合いにも限界がある」と悔しさをにじませる。

 その後、住民は委員会をつくり、学生らとハイツの活性化に向けて、広場の活用方法などを考えてきた。だが、近年は新型コロナウイルス禍の影響もあり、長続きしなかった。

 07年にハイツへ転居した別の主婦(74)も、高齢化に危機感を募らせている。

 女性は、須磨の海を見渡せる部屋を「ついのすみか」と考えていた。ただ昨年、乗用車の運転免許を返納すると生活は暗転した。

 周辺にはコープミニが1店舗。大型スーパーや銀行などを利用したい場合、山陽電鉄月見山駅やJR須磨駅などに足を延ばす必要がある。

 だが、移動手段は、1月下旬から試験運行が始まったコミュニティーバスのみ。利用は1回200円。「敬老パス」を使って小児料金で利用できる市バスなどと比べると割高だ。

 女性は「買い物に行くのも一苦労。コミュニティーバスの運賃が、市バスと同じぐらいになる補助があればいいのに」と話す。

 岩永さんと女性は今回、投票に行くつもりだ。共通する思いは一つ。「地域住民が何に困っているのか、私たちの思いを、すくい上げてほしい」(千葉翔大)

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