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昨春に続き、4月の賃上げを決めた神戸合成。本社工場で働く従業員をねぎらう宮岡督修社長(左から2人目)=小野市匠台
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昨春に続き、4月の賃上げを決めた神戸合成。本社工場で働く従業員をねぎらう宮岡督修社長(左から2人目)=小野市匠台
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 大手企業が軒並み基本給を底上げするベースアップ(ベア)など賃上げに踏み切る今春闘。今月15日の大手の集中回答日にも、労働組合の要求への満額回答が相次いだ。賃上げの動きは兵庫県内にも広がり、信用調査会社の調査によると、その数は大手の8割超、中小でも7割を超える。だが、歴史的な物価高騰分の取引価格への上乗せは十分とは言えず、原資の捻出に頭を悩ます。人材の確保やつなぎ留めへ従業員の待遇改善に力を振り絞る。

■人いなければ、ものづくりも開発も困難

 ベルトコンベヤーを流れるスプレー缶に、機械が自動車用コーティング剤を詰める。最後にボタンやキャップを取り付け、梱包(こんぽう)するのは従業員の手作業だ。

 同県小野市にある化学製品メーカー神戸合成の本社工場。「人がいなければ、ものづくりも開発も難しくなる」。相次ぐ賃上げの動きを前に、宮岡督修(まさのぶ)社長(65)が危機感を募らせた。

 同社は4月、昨年に続き5千円のベアに加え、10万円の特別手当の支給を決めた。今月の社員旅行で発表すると、皆から喝采を浴びたという。「本音は1万5千円ほどベアしたい。でもこの先、業績が悪くなっても下げられない。手当は苦肉の策だった」

■価格転嫁できなくてもベア

 少子化や若者の大手志向で新卒採用は容易ではない。定年退職で従業員は目減りし、10年近く前の約50人から34人に減った。一方、取引先の自動車メーカーなどとの価格交渉は思うように進まず、原材料の高騰分全てを転嫁できていない。「設備も更新したいが、人をとらないと会社が持たなくなる」と厳しい中でもベアに踏み切る訳を明かす。

 東京商工リサーチ神戸支店(神戸市中央区)が2月、県内企業を対象に行った調査では、2023年度に賃上げ予定と答えたのは84社と全108社の78%に上った。資本金1億円以上の大手の89%(16社)、中小でも76%(68社)を占めた。規模を問わず定期昇給や賞与の増額で対応する企業が目立ち、ベアを実施するのは半数の42社にとどまった。

 神戸市のデザイン会社の男性社長は「物価高騰で厳しい社員の生活を支えたい」と4月からの賃上げを決めた。業績不振から今期は最終赤字を計上。債務超過に陥る中でも、昇格や勤務評価によって全ての社員の給与を月数千円~1万5千円引き上げる。「ベアは難しくても、何とか頑張っている社員に応えたかった」と話した。

■企業体力による二極化進む

 県経営者協会(神戸市中央区)が1~3月に会員企業に実施した調査では、23年度中に賃上げ予定の企業は全132社の70%に当たる92社。前年に賃上げしなかった30社に限ると23%(7社)にとどまり、企業の体力による二極化が進んでいることをうかがわせた。

 新型コロナウイルス禍で落ち込んだ業績回復の見込みがたたず、賃上げできない企業もある。神戸・長田の地場産業ケミカルシューズ業界では、外出機会の減少による需要減に加え、円安に伴い値を下げる輸入品との競争激化や物価高が追い打ちをかける。

 ある靴メーカーの男性社長は「人材の定着や確保のために賃上げをしたくてもない袖は振れない。大企業のようにはいかない」と漏らした。

兵庫県経営者協会
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