宇宙航空研究開発機構（ＪＡＸＡ）が１３年ぶりに実施した宇宙飛行士選抜試験で、神戸女学院中等部・高等学部（兵庫県西宮市）を卒業した米田あゆさん（２８）が合格した。医師として働く３人目の女性飛行士で歴代最年少。朗報を受け、高校３年時に担任を務めた稲垣祐子さん（５７）らが取材に答えた。主なやりとりは次の通り。

　－率直な感想は

　医師の道を歩んでいたので、宇宙飛行士ということに驚いた。ただ、高校生の時から「チャレンジ」という言葉をよく聞いていたし、（ＪＡＸＡ）の発表会見でもその言葉を口にしていたので、彼女らしいチャレンジをして実ったんだと感じた。心の底からうれしい。

　－どのような生徒

　スポーツ大好きで活発。ボランティアにも積極的に参加していた。自分の行動が直感的に分かっていて、周りを見ながら行動する和を重んじる子だった。初対面からずっと礼儀正しく笑顔の絶えない子だと思っていた。

　－思い出されることは

　運動が得意だったので体育祭では主役にもなれたと思うが、チームＴシャツのデザインなどを担当してチームがどうすれば良くなるかを考えていた。そんな縁の下の力持ちなところもあって、周りが見える優しい生徒だった。

　高校１年生の２月から２年生の１月までスイスに留学していて、その間に東日本大震災があった。ホストファミリーや友達が日本を心配する様子を見て「世界でもこんなに自分たちの国のことを思ってくれていると実感した」と話していたことを思い出す。

　－中学時代はテニス部

　練習熱心で、夏場は日焼けして真っ黒だった。練習は厳しかったと思うが、仲間たちと切磋琢磨してやるべきことを黙々とやっていた。計算ができる選手で大きな大会でも力を発揮できていた。

　－学生時代のチャレンジは

　スイス留学は大きかったと思う。中学時から英語はとても得意で、話すことも堂々としていたが、それでも英語圏ではないスイスで根を上げずに１年間過ごしたことは本当にすごい。

　－受験生の時は

　医学部を目指す生徒の雰囲気とは少し違った。勉強に没頭というより体育祭など学校行事にも力を入れていて、それが結果として彼女の力になることも見えていたような広い目を持っていた。いつも落ち着いていて、余裕を持って受験生をしていた。

　－社会人になってからは

　時々メールで連絡をしていた。大学卒業後、２０２０年のメールが最後で「医師として患者に寄り添うために、もっと心を見ていきたい。心を見るには芸術が大事になるので芸術も学びたい」と言っていた。忙しい中でも患者のために芸術にも興味を持つのは、彼女のチャレンジ精神だと思う。医療と芸術の二足のわらじかと思っていたら、今度は宇宙。彼女のチャレンジは終わることがなくて、宇宙にまで行くんだなと思った。

　－試験を受けていたことは

　全く聞いてなかった。今日のニュースで知った。中高では、宇宙に興味を持っていたかどうかは聞いたことがなかった。

　－医学部を志望

　高校３年の４月に進路の面談をした時には、行きたい大学や進路も決まっていてぶれなかった。スイス留学で勉強にブランクもあったが信念が強い生徒だった。勉強は文系も理系もよくできた。英語がとてもよかったので医学部と聞いて驚いた。ハンセン病患者の施設訪問や文具を途上国に寄付する活動など、ボランティアにも積極的だった。

　－後輩たちへの影響は

　神戸女学院は先輩が後輩を引っ張って、後輩はその後ろ姿を見て歩んでいくような校風がある。同じように上の学年の子たちは米田さんの姿を見て「自分も続こう」と頑張ってくれると思う。

　－米田さんに期待することは

　医学と芸術、そして宇宙へと活躍の場を広げていて、世界や人類のためにいろんなことを持ち帰ってくれるはず。活躍を陰ながら応援します。

　－本人に会ったら

　私たちの知らない世界を見てくる。いろんなことを私たちや後輩たちに語ってくれるのを楽しみにしている。焦らずに頑張ってほしい。