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 暴言や強権、そんな「マッチョ」で男性中心的なイメージがつきまとう政治の現場。地方議員を取り巻く環境は、ハラスメントが起きやすい。

 阪神間の40代の女性議員は、初挑戦の選挙で、投票の見返りに有権者らから不当な行為をされる「票ハラ」を体験した。

 「べっぴんさんやな」と手をなで回され、肩を触られた。当選後、なじみのない男性が「相談」と称して頻繁に自宅を訪れた。居留守を使うしかなかった。

 内閣府の地方議員への調査では、女性の約6割が有権者や同僚から被害を受けていた。男性よりも多く、政界進出を妨げるハードルにもなっている。

 「出稼ぎ(議員)」-。兵庫県稲美町議会の樋口瑞佳(みずか)(44)は3年前、ブログで男性議員にやゆされた。

 元々、東京都内で暮らしていたが、出身地にUターン。子育てをしながら町議を務める。夫は東京に残っており、それが投稿につながったとみられる。

 以前勤めていた都内の広告代理店でも同じだった。結婚し、出産後は時短勤務で育児と両立した。子どもの小学校入学を機に「働く母親を勇気づけられるモデルになりたい」と男性上司に提案すると、「働くママはお荷物」と返された。あぜんとした。

 「女性が発言の場に出ないと思いは実現されない」。数年前、政治分野のジェンダーギャップを考える講座で聞いた言葉が浮かんだ。議員に転身するきっかけになった。

 元町議の父親から地盤を引き継ぎ、当選にこぎ着けた。議会に残るハラスメントには気がめいるが、高齢の男性議員には相談しづらい子育ての困り事も、住民から入るようになった。

 「性別による役割分担の意識が根強い地方にこそ女性議員が必要。発言を続けたい」。原点を胸に刻む。

 およそ男女半々で成り立つこの社会で、議場の構成は男性が大半を占める。

 議会の男女比は同数に近づけるべきか-。神戸新聞の県内地方議員アンケートでは、女性の9割が「そうだ」としたが、男性は6割未満で意識の差が出た。

 実際、県内41市町のうち3分の1の14市町は、女性議員が1人かゼロ。そんな中、播磨町議会は議員14人中6人を女性が占め、議場の景色が異なる。

 昨年7月まで、県内初の女性町長が4期16年にわたり町政を担った。女性サークルや消費者関連団体の活動も活発で下地があった。

 4年前の統一地方選で初当選した大北良子(56)も、ボランティア活動で行政や議会と接点ができた。「出産や子育て、介護など女性に身近な問題を、実体験を踏まえて議論できている」。手応えを語る一方で、現状には満足していない。

 住民に対し「開かれた議会」を目指しているが、それを疑う出来事があった。昨年の本会議でのことだ。母親が乳児と一緒に傍聴を希望したが、議会側は泣いたら退出するよう求めた。

 「進行の妨げになる可能性がある」(議会事務局)との理由だが、県内外の議会では、防音ガラスを施した親子傍聴席を設ける動きも広がっている。

 議会が変わらなければ、小さな声を聞き逃す。「女性や若手が増えてきた議会が声を上げ、多様な意見を反映させたい」。“男女同数”議会の真価が問われている。=敬称略=

(統一選取材班)

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