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兵庫県議会の本会議の様子。4年に1度、改選を迎える統一地方選が近づく=県議会本会議場
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兵庫県議会の本会議の様子。4年に1度、改選を迎える統一地方選が近づく=県議会本会議場
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 都道府県から市区町村まで、全国の地方議会には3万人を超える議員がいる。私たちの声を聞き、自治体の政策を決める議会は、長らく活性化が課題とされ、時に不信感を招いて住民を遠ざけてきた。4月、その多くで改選を迎える4年に1度の統一地方選が巡ってくる。志を持って政治の道に入った兵庫県内の新人議員たちの目を通して、議会の今を見つめたい。

■独特のしきたり、戸惑うばかり

 大阪府との境に位置する兵庫県猪名川町。町としては人口規模が比較的大きく、約3万人が住む。2019年9月の町議選で初当選した井戸真樹(47)は、この3年半で感じた世間とのずれに、ため息を漏らす。

 夏場のことだ。本会議や委員会で長袖シャツの腕をまくると、先輩議員に「あかん」と注意された。理由を尋ねると「腕をまくると、決闘に臨んでいるように見えるから」。スニーカーでの出席も同じく「あかん」だった。

 町議会事務局によると、内規で「議会の品位を重んじる」との規定はあるが、服装などの細かな取り決めはない。「紳士協定」や「申し送り」として浸透したルールに、井戸は「誰かが変えないといけないけど、1年生の意見は通らない」と諦めるしかなかった。

 元々は隣接する川西市の小学校で非正規の用務員として働いていた。契約更新は年2回で、次年度の勤務は、市の予算案が議会で可決されるまで分からなかった。雇用が不安定で、先の見通しが立たない。「こんな仕組みは変えるべきだ」と、自宅のある猪名川町で議員を目指した。

 だが、実際になってみると、議会独特のしきたりは戸惑うことばかりだった。

 町が提出してきた施策の資料に分からない点があっても、「教えてください」ではなく、「趣旨は?」と問うよう指導された。町側の答弁後に「ありがとう」も不要とされた。

 議員の立場を誇示したいとみられるが、窮屈さに「人として当然のことを忘れてしまいそうになる」と感じる。「長いこと議員をしたらあかんのかな」。そんな本音が、つい口をつく。

■深まらない議会での政策議論

 神戸新聞社が県内の全市町議員に実施したアンケートで、「所属議会におかしなルールがあるか」と問うと、回答者の半数に近い約43%が「ある」とした。

 戸惑いは議会の流儀だけではない。「議員になってつらかったこと」では、若手議員の多くが壁にぶつかっていた。「自分の力では施策実現が困難」「市民のための政策が進まない」

 2年前の豊岡市議選で、タンクトップ姿の選挙ポスターを張りだし、市では史上最年少で当選した荒木慎大郎(しんたろう)(28)もその一人だ。「理想と現実のギャップを感じた」と明かす。

 高校を卒業後、進学や就職で地元を離れていく若者を見てきた。人口は約7万5千人と10年前から9千人減少。年間約700人あった出生数も約400人に減った。

 自身もいったん東京で就職したUターン組。地元に危機感を抱き、同世代の仲間とまちおこし団体を設立した。そこで「政治と暮らしが結び付いていない」実情に気付き、「若者が帰ってきたいと思えるまちに」と、立候補を決めた。

 解決すべき課題ははっきりしている。当選後、5回あった定例会の全てで、市の方針をただす一般質問に立ち、中高生への支援策や20代の意見を市政に生かす考えを問うた。難題だと分かっているが、政策の中身は深まることなく、どこか手応えを得られない。

 ただ一つ、意を強くしたことがある。「大事なのは服装などの外見ではなく、議論の中身」。LINE(ライン)の公式アカウントでつながる300人以上の若者らに議会中継をPRしている。全国でも数少ない20代の議員として、若い世代に政治を届けたいと思う。=敬称略=

(統一選取材班)

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