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「みんな元気ー?」。カメラ越しに子どもたちに語りかける「きゃしー」こと川島由衣さん=大阪市北区末広町
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「みんな元気ー?」。カメラ越しに子どもたちに語りかける「きゃしー」こと川島由衣さん=大阪市北区末広町
クリニクラウンが大好きだっためいちゃん(右手前、日本クリニクラウン協会提供)
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クリニクラウンが大好きだっためいちゃん(右手前、日本クリニクラウン協会提供)
めいちゃんが書いた手紙(左)と似顔絵(同協会提供)
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めいちゃんが書いた手紙(左)と似顔絵(同協会提供)
2020年3月に息を引き取った5歳のめいちゃんが書いた、クリニクラウンの「トンちゃん」の似顔絵(日本クリニクラウン協会提供)
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2020年3月に息を引き取った5歳のめいちゃんが書いた、クリニクラウンの「トンちゃん」の似顔絵(日本クリニクラウン協会提供)
兵庫県立尼崎総合医療センターの病室で、クリニクラウンによるオンライン訪問を楽しむ子どもや母親ら(日本クリニクラウン協会提供)
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兵庫県立尼崎総合医療センターの病室で、クリニクラウンによるオンライン訪問を楽しむ子どもや母親ら(日本クリニクラウン協会提供)

 新型コロナウイルス対策で医療機関の入院患者への面会制限が続く中、闘病中の子どもたちと遊び元気づける臨床道化師「クリニクラウン」が、オンラインでの病室訪問を続けている。背中を押したのは、コロナ禍のさなか、クラウンとの再会を待ちわびながら亡くなった5歳の女の子からの手紙だった。

■看護師らに負担かかる

 真っ赤な丸い鼻に、二つ結びの髪、ピンク色のサロペット姿のクリニクラウン「きゃしー」こと川島由衣さん(36)が、カメラに向かってとびきりの笑顔で大きく手を振りかぶる。

 「みんなに会えてうれしいよー!」

 画面の向こうには、東京都新宿区の訪問看護ステーションを利用している0~2歳の子どもたち14人。きゃしーが所属するNPO法人日本クリニクラウン協会(大阪市北区)によるクラウンのオンライン訪問は累計で400回を超える。

 当初、オンライン訪問を本格的に続ける予定はなかった。2020年4月、対面での訪問がかなわなくなり、一度だけ試したが、それ以上は進められなかった。ただでさえ感染対策で業務に追われる看護師らに、タブレットの配布や消毒などで負担をかけることに引け目を感じたからだ。

■似顔絵と「ありがとう」

 そんな頃、一通の手紙が協会に届いた。岡山県内の病院で治療していた5歳の女の子「めいちゃん」がクレヨンで、きゃしーら複数のクラウンの似顔絵と、幼い文字で「ありがとう」と書いていた。

 添えられた母親の手紙には、めいちゃんが次の訪問で直接渡すのを楽しみにしていたこと、3月に息を引き取ったこと、亡くなる直前までの8日間、コロナの面会制限で家族も会えなかったことが書かれていた。

 クラウンが大好きだけど、近寄ると泣く。いなくなっても泣く。でも、後で見返せるように母親に動画を撮らせる。そんな姿をきゃしーもよく覚えていた。

 母親は「(娘の)つらく痛い入院生活に花を咲かせてくれました。これからもたくさんの子どもを楽しませて」と感謝の言葉をつづっていた。きゃしーらは涙を流し、「クラウンの活動は不要不急じゃない。待っている子たちに楽しい時間を届けなくちゃ」と覚悟を決めた。

■「奇跡のよう」

 どきどきしながらオンライン訪問を始めた。6月、初めて病室とオンラインでつなげられたのは兵庫県立尼崎総合医療センター(兵庫県尼崎市)。きゃしーは小児がんと闘う9歳の男の子と再会した。

 コロナ前はほぼ毎月会えていたのに、5カ月あいていた。男の子はうれしそうに、退院が決まったと報告した。「オンライン訪問をしなかったら会えないままやった。奇跡のよう」と喜んだ。

 その後はオンライン訪問に注力。感情が対面の半分ほどしか伝わらないのが課題だったが、クラウン同士の研修で改良を重ねた。リアルの時より身ぶり手ぶりや話し方、表情を大げさに。画面いっぱいに顔を近づけたり、怒りや悲しみを表現したりしても、画面を通せば「面白い」に変わると気付いた。

■心の成長に必要

 最初は子どもの反応が読み取れず不安になったが、付き添う親やスタッフの感想を聞くなどして自信につなげていった。

 きゃしーは人形劇団にいた20代のころ、東日本大震災の被災地での公演をきっかけにクラウンの道に進んだ。おとなしかった子どもたちが、劇が進むうちに声を出したり走り回ったりして楽しむ様子を見て、強く心が動いたという。

 「人間は実際に顔を見て肌が触れ合ってつながる生き物。出会いは、子どもたちの心の成長にも絶対に必要」ときゃしー。コロナ禍以降、会えていない子どもたちと、対面でも再会できる日を心待ちにしている。

【クリニクラウン】要望があった病棟を訪れ、真っ赤な丸い鼻を着け、ハーモニカや皿回し、指人形などを披露しながら、子どもの個性に合わせて遊ぶ。日本クリニクラウン協会には芸や医学、保健衛生の研修を受けた30~70代の33人が登録し、普段は看護師や保育士、会社員など別の仕事をしながら活動している。

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