あれほど重要な文書をどうして捨てるのか、理解できないと嘆く声は多い。1997年の神戸連続児童殺傷事件をはじめとする重大少年事件記録の廃棄問題。しかし、司法文書の管理に詳しい専門家には、それが裁判所職員にとって自然の流れだったと指摘する人もいる。現状、司法文書全体の99・9%は捨てられていると説く、元青山学院大法科大学院教授の塚原英治弁護士(71)は「保存スペースと人を確保することが、何より重要」と強調する。
■原本の保存
昨年10月、問題の発覚直後に挙がった課題が、廃棄前のデジタル保存だった。スキャン(電子的な読み取り)しておけば良かったのに-と憤る人は少なくなかった。しかし、塚原さんは「原本が紙であれば、紙のまま保存するのが鉄則」とする。スキャンしたからといって文書を廃棄すると、原本と同一内容か確認できなくなるためだという。
一方、塚原さんも、原本の傷みを防ぎ、遠隔地でも、複数人でも利用できるようになるデジタル化は、「閲覧の手段」としては評価する。ただ、とじられた古い文書を電子化する作業は非常に手間がかかる。過去の司法文書をたやすく電子保存できるかのような意見には、首をかしげる。
■立派な基準
そもそも、連続児童殺傷事件の記録が廃棄されるより前から、永久保存(特別保存)を定めた規則「事件記録等保存規程」はあった。塚原さんは、この規則違反は「法律違反に匹敵するほど重大なこと」と話す。
また、特別保存の対象として「世相を反映した事件で史料的価値の高いもの」や、「全国的に社会の耳目を集めた事件」などと具体例を列記した最高裁通達(1992年2月7日付)は、「立派な基準」と指摘する。塚原さんは、これによって重要な記録は守られていると信じていた。
だが、2019年に民事裁判記録の大量廃棄が判明。その後、各裁判所が『日刊紙2紙以上に掲載された』などとする保存の選定基準を設けたが、「数値基準をいくつ作っても、それをチェックする人がいなければ機能しない」と違和感をあらわにする。
■適切な管理
「裁判所は適切な記録管理のため、棚に収まりきらない文書を平積みしないよう、保存期限を迎えた文書の廃棄が必要との考えが強い」。そのため、限られた記録庫のスペースを生む視点から、冊数の多い記録ほど廃棄する意味があると見る向きもあるという。
塚原さんは、保存する「場所」や、閲覧を目的としたデジタル化を含めて保存を担う「職員」の確保を訴え、記録保存の予算を充実するよう求める。
各地の家裁で重要な記録が、自然に廃棄されたように見える今回の問題。塚原さんは「永久保存の趣旨を全職員に徹底させることを考えなくてはならない」とも話す。(霍見真一郎)
【つかはら・えいじ】1951年、東京都生まれ。東京大卒。97年に第二東京弁護士会副会長。早稲田大法科大学院客員教授などを経て、2015~20年に青山学院大法科大学院教授。弁護士。「司法情報公開研究会」の共同代表。
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