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明石歩道橋事故の遺族、白井義道さん(左端)を取材する韓国の週刊誌「時事IN」の全慧願記者(右)ら=1月3日、明石市樽屋町
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明石歩道橋事故の遺族、白井義道さん(左端)を取材する韓国の週刊誌「時事IN」の全慧願記者(右)ら=1月3日、明石市樽屋町
歩道橋事故の遺族、下村誠治さん(右端)と事故現場を取材する「時事IN」の記者たち=1月3日、明石市大蔵海岸通1
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歩道橋事故の遺族、下村誠治さん(右端)と事故現場を取材する「時事IN」の記者たち=1月3日、明石市大蔵海岸通1

 韓国・ソウルの梨泰院で日本人2人を含む159人が亡くなった雑踏事故を巡り、2001年7月に兵庫県で起きた明石歩道橋事故に韓国メディアの注目が集まっている。今月、韓国の週刊誌「時事IN」の記者らは明石を訪れ、歩道橋事故の遺族や弁護士らを取材し、証言や事故原因、裁判の結果などを特集する記事を掲載した。全慧願記者(34)は「韓国でも歩道橋事故の教訓は生かせるはず」と話す。

 梨泰院雑踏事故は昨年10月29日夜に発生した。韓国は大規模な雑踏事故による国家賠償訴訟は前例がなく、テレビ、日刊紙など多くのメディアが、明石歩道橋事故との共通点を報じた。

 歩道橋事故は01年7月21日夜に起きた。花火大会会場だった明石市の大蔵海岸とJR朝霧駅を結ぶ歩道橋で見物客が折り重なるように倒れ、子どもを含む11人が死亡、247人が負傷した。二つの事故に共通するのは、配置された警察官の大半が別の任務に割かれ、雑踏警備の要員や態勢が不十分だったことだ。

 テレビ局JTBCは報道番組で、歩道橋事故の裁判を紹介。主催者の自主警備があっても、警察は雑踏警備や計画策定の責任は免れないとした判決内容に触れ、「市民の危険を防ぐのは警察の義務」と指摘した。また韓国日報は、明石市の事故調査委員会委員を務めた室崎益輝神戸大名誉教授を電話で取材。「(梨泰院、明石のいずれも)密集状態にならないように人流を制限すれば惨事は防げた」と解説した。

 一方、「時事IN」は、歩道橋事故の遺族有志が昨年に出版した書籍「明石歩道橋事故 再発防止を願って」に注目。遺族が悲しみの中で裁判や事故の再発防止活動に取り組んできた経緯を知り、「日本の遺族の戦いを伝えたい」と取材を始めた。

 今月上旬、全記者とカメラマンが訪日し、遺族4人と弁護団の佐藤健宗弁護士にインタビュー。明石市総合安全対策室や市消防局にも足を運び、計13ページにわたる記事にまとめた。

 13日発行の紙面では、現場での犠牲者や遺族の足取りを追い、民事訴訟も含め計4度の裁判結果を報じた。韓国にはない事故調査委の制度も紹介し、歩道橋事故で初めて使われた現象「群衆雪崩」も説明した。

 事故で母を亡くした白井義道さん(62)=神戸市西区=は「韓国も、事故ではなく警察などの不作為による事件だ。私たちの取り組みを少しでも役立ててほしい」と訴え、2人の子どもを失った有馬正春さん(63)=明石市=は韓国の遺族に「前を向いて頑張ってください」とメッセージを送った。

     ◇

【韓国・梨泰院雑踏事故】 2022年10月29日夜、ソウルの繁華街・梨泰院で発生。ハロウィーンを前に幅約3メートルの細い坂道に詰めかけた群衆が同時多発的に倒れ、159人が圧死するなどした。北海道根室市出身の冨川芽生(めい)さん(26)と、埼玉県出身の小槌杏(こづち・あん)さん(18)の日本人2人も犠牲になった。

【時事IN】 韓国の雑誌「時事ジャーナル」から編集者らが独立し、2007年から発行する時事週刊誌。販売部数は約3万5千部で国内最多。梨泰院雑踏事故では政府などの責任を問うキャンペーン報道を続けている。

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