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仰天の「シャレコーベ・ミュージアム」。国道からは見えないのでご安心を=兵庫県尼崎市浜田町5
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仰天の「シャレコーベ・ミュージアム」。国道からは見えないのでご安心を=兵庫県尼崎市浜田町5
故・河本圭司さん。気づきましたか? 帽子もネクタイもスカル柄=2015年4月、兵庫県尼崎市浜田町5
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故・河本圭司さん。気づきましたか? 帽子もネクタイもスカル柄=2015年4月、兵庫県尼崎市浜田町5
いわく付きのメタル装飾頭蓋骨。ちなみに医学用語では「とうがいこつ」。「ず」と読むのは頭痛だけだ=兵庫県尼崎市浜田町5
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いわく付きのメタル装飾頭蓋骨。ちなみに医学用語では「とうがいこつ」。「ず」と読むのは頭痛だけだ=兵庫県尼崎市浜田町5
ハロウィーンや死者の日など世界の風習や文化がテーマの2階展示=兵庫県尼崎市浜田町5
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ハロウィーンや死者の日など世界の風習や文化がテーマの2階展示=兵庫県尼崎市浜田町5
車も「10-96」(ドクロ)ナンバー。かつては通勤に使用、夫人も最近まで乗っていたというから驚きだ=兵庫県尼崎市浜田町5
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車も「10-96」(ドクロ)ナンバー。かつては通勤に使用、夫人も最近まで乗っていたというから驚きだ=兵庫県尼崎市浜田町5

 世界初「シャレコーベ・ミュージアム」とは、しゃれや冗談ではなく大まじめ、神戸ならぬ兵庫県尼崎市にある私設博物館だ。医学博士がコツコツ集めた頭蓋骨がらみのアレコレが、何千点も詰まっている。ところが博士は3年前、志半ばで逝去。収集は一代限りの例にたがわず、「散骨」の運命に…と思いきや、実は今もあるのです。

 ミュージアムは外観からしてドーン! どこからどう見てもドクロ、漢字で書くと「髑髏」の館だ。体は名を表すというべきか、頭蓋の骨の凹凸や縫合線まで再現しているというから芸が細かい。言っときますが、目の前は車が行き交う国道2号で、隣近所は一般民家。そのドッキリ感たるや、二度見すること必至である。

 創設者の河本圭司さんは関西医科大教授を務め、日本脳腫瘍病理学会などの会長を歴任した脳神経外科医。開業医の両親の下で生まれ育った自宅の庭に、ミュージアムを建てたのは2003年3月3日3時3分3秒、一般公開を始めたのは2011年11月11日11時11分11秒-というから、こだわりが半端じゃない。

 とにかく、スカル(頭蓋骨)とあらば、何でもある。アクセサリーやTシャツに、喫煙具に文具に絵に彫刻、ハロウィーンや海賊グッズにクリスタル・スカル、骨格模型に交じって実物標本もある。7800点以上のコレクションを残し、河本さんは2019年8月7日、75歳で亡くなった。

 さぞや家族は持て余し、これ幸いと閉めてしまおうとしたのでは…と想像するのは俗人の浅はかさ。「ほとんど休んでないですね」と山本佳代さん。河本さんの長女であり、2代目の館長である。

 「父は(医師の)仕事をしつつ、寝ても覚めてもここのことを考えていた。すごい愛があるわけですよ。残したい、誰かに続けてほしいとずっと言ってましたから。母は『もういいんじゃない』という感じだったけど、それなら私がしようかと」。毎週日曜の開館日を1回休んだだけで再開した。その後もコロナ禍で外出自粛の時期を除き、河本さんを慕うスタッフの手で運営は続けられている。

 でも、家族としては、シャレコーベ収集なんて、イヤじゃなかったですか?

 「コレクションのこと全然知らなくて。最初は大学に置いてたらしく、自宅にどんどん増えたのは私や兄が家を出てから」。奥さんにも「生きがいなら」と容認されていたが、あまりの買いっぷりにクレジットカードを取り上げられたこともあったそうだ。とにかく、ゴーイング・マイウェイ。ミュージアムも、自宅の庭に不用心だと、家族はそろって反対したが、意に介さなかったという。

 河本さんが収集を始めたのは1980年代後半。きっかけとなったのが、国際学会のあった米サンフランシスコで入手した、ガラスの目玉とメタルで装飾された本物の頭蓋骨だ。ご本人いわく「持ち帰ってから家庭に次々と不幸が起こり、おはらいにいった」そうですが…。

 「それも全然知らなくて。私が電柱に気づかずに走っていて顔をぶつけたり、兄が自転車で転倒して顔が腫れ上がったりしたのに照らし合わせて、母が『怖いからおはらいに』と。それで父は車で出かけ、廃車になるくらいの事故に遭ったんです」

 まさしく「ほんとにあった怖い話」じゃないですか!

 「でも命に別状なく元気で。そこからは何もなく平穏でした」。頭蓋骨の中には、おはらいでもらったと思われるお札があるという。

 コレクションは、河本さんの亡くなった後も少しずつ増え続けている。

 「ハロウィーンのときの人形や、お皿なんかを私がちょこちょこ買ってて。8000点近くになっていると思います。あえて整然と並べずに、ぎっしり、ごちゃごちゃがウチの売りかなと。一つ一つよく見ると表情が違うし、造りも細かくて面白い」

 山本さんも、コレクションのアクセサリーを使わせてもらう恩恵にあずかり、スカルTシャツコンテストなどイベントの手伝いに駆り出されてきた。決して距離を置いていたわけではない。

 「でも、すごいマニアなわけでもなく、私が館長でいいのかと悩んだこともありました」。河本さんは「訪れる人よりも知識を持っとかなあかん」と常々口にし、イベントの段取りなどにも厳しかったという。

 「私には本職の薬剤師の勉強も大事で、父のようには難しい。今は楽しいと思ってもらえる場所にできれば、それでいいんじゃないかなと開き直っているんです」

 オリジナルのグッズやガチャガチャなどを始め、SNSでの発信にも力を入れる。維持費がかさみ、入館料はやむなく値上げしたが、今も開館日には十数人が訪れ、リピーターや海外からの来館者もある。

 河本さんが病床で気にかけていた、入魂のコレクションカタログもようやく完成。発行は2022年2月22日、価格は税込み2222円と、当然ぞろ目だ。さらに「うちはどこにもない、世界一のミュージアム」が口癖だっただけに、日英2カ国語表記にこだわった。

 残る河本さんの夢が、もう一つ。「ギネスブックに載るんやと言ってて、コレクションの一つ一つに自分でナンバーを付けてたのも、そのため。私も、そうしたいとは思ってましたが、許してもらおうかな…」

 いえいえ、目指せ!1万点。東の「目黒寄生虫館」に並ぶ、博士の愛した博物館である。

 日曜午前10時~午後5時開館(1月は15日から開館予定)。詳細は公式SNSで。

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