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米の代金の支払証書「米切手」。左から久留米藩、長州藩、佐賀藩、唐津藩=神戸市灘区六甲台町
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米の代金の支払証書「米切手」。左から久留米藩、長州藩、佐賀藩、唐津藩=神戸市灘区六甲台町
長州藩に融資していた加島屋が、藩の財政状況について「説教」する手紙の下書き=神戸市灘区六甲台町
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長州藩に融資していた加島屋が、藩の財政状況について「説教」する手紙の下書き=神戸市灘区六甲台町
加島銀行の行員の集合写真。1900(明治33)年の1月1日に撮影された=神戸市灘区六甲台町
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加島銀行の行員の集合写真。1900(明治33)年の1月1日に撮影された=神戸市灘区六甲台町
神戸大経済経営研究所の家森信善所長(左)に、広岡家文書の寄託契約書を手渡す西野久子さん。中央は神大の高槻泰郎准教授=神戸市灘区六甲台町、神戸大兼松記念館
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神戸大経済経営研究所の家森信善所長(左)に、広岡家文書の寄託契約書を手渡す西野久子さん。中央は神大の高槻泰郎准教授=神戸市灘区六甲台町、神戸大兼松記念館
広岡家文書の一部を解説する神戸大経済経営研究所の高槻泰郎准教授(左)=神戸市灘区六甲台町、神戸大兼松記念館
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広岡家文書の一部を解説する神戸大経済経営研究所の高槻泰郎准教授(左)=神戸市灘区六甲台町、神戸大兼松記念館

 「参勤交代は人件費がかさむ。出発と到着時だけ豪華に見せればいい」…。江戸期の大坂で名をはせた豪商「加島(かじま)屋」の文書や写真約2万点が、2023年度中にデジタル史料として公開される。神戸大学経済経営研究所が、創業家の広岡家から寄託を受けて準備。大名家への融資内容を示す史料からは各藩の懐具合が丸わかりで、参勤交代や姫の嫁入りを簡素化するよう求めるなど、現代の「メインバンク」さながらの生々しいやりとりが垣間見える。

 加島屋は、京都の三井や大坂の鴻池と並ぶ江戸期の豪商。摂津国川辺郡東難波(ひがしなにわ)村(現尼崎市)出身の初代久右衛門(きゅうえもん)が1625年、大坂で始めたと伝わる。大同生命保険の創業者の一人で、NHK連続テレビ小説「あさが来た」のモデル、広岡浅子も一族に当たる。

 米取引で財を成し、各藩に融資する「大名貸し」で成長。世界初の先物取引所とされる堂島米市場(こめいちば)で初代の頭取役を務めたが、鴻池などに比べて史料が少なく、謎が多かった。

 公開される「広岡家文書」は詳細で、融資量が多かった長州藩に1782(天明2)年、財政政策を指南する手紙の下書きも。史料の整理やデジタル化に当たる同研究所の高槻泰郎(やすお)准教授(43)は「書き方は丁寧だが、財政支出を収入の範囲で賄うようになど、厳しく指導している」とする。

 他の藩にも「姫君の結婚に関して無駄な出費が多い」などと指摘。高槻准教授は「大名からは預金も受け入れている。大名が困窮していたとする見解に一石を投じるなど、日本の銀行史の新たな発見につながるかもしれない」とする。

 明治期の史料では、洋装した広岡浅子や加島銀行の行員など写真が多い。豪商の暮らしぶりや文化の研究に役立つといい、高槻准教授は「多くは未解読。研究者にはどんどん論文を書いてほしい」と話す。

 今回、本家に伝わる約1万2千点を、10代目久右衛門の孫西野久子さん(63)=芦屋市=が神大に寄託。20日に神大で寄託契約書の調印式があった。西野さんは「研究が進んで、時代劇に加島屋が出てくるようになればうれしい」と期待する。

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